多くの起業家は、恥ずかしい失敗をできるだけ避けようとする。しかし、ダリル=アン・デナーは恥を恐れず、むしろ戦略として活用することで、わずか2年で1億ドル(約150億円)規模のファッションブランドを築き上げた。
化学教師からインフルエンサーへ転身し、現在はファッションブランド「nuuds」の創業者兼CEOを務めるデナー。多くの人が避けて通る失敗談を成長の糧としてきた彼女は、ポッドキャスト「The Failure Factor」に出演し、起業家として成功をつかむために自身が実践してきた6つのルールを明かした。
ルール1:「恥をかくことは、参加するための代償である」
デナーは、製品開発では完璧を目指すよりも、まず世に出し、改善を重ねていくことが大切だと説く。彼女自身、インフルエンサーとして活動を始めたばかりの2015年、インスタグラムにコーディネート写真の投稿を始めた。しかし、その結果フォロワーの半数を失ってしまったという。「夫の友人たちは、私の行動を理解できず、奇妙だと思っていた」と当時を振り返る。
多くの人なら、フォロワーの半数が離れた時点で、自分のブランドには市場性がないと判断するだろう。しかしデナーの視点は違った。彼女は、離脱した人々がそもそも自分のターゲットではなかったと捉えたのだ。そして、恥ずかしさを乗り越えて投稿を続けた結果、最終的にフォロワー数は210万人にまでに増えた。
このルールは、新しいことを始める際の社会的リスクに焦点を当て、プロフェッショナルとして認められる前に素人として見られることを受け入れる重要性を説いている。ビジネスの世界では、弱点がなくなるのを待っていては好機を逃し、他者にチャンスを奪われてしまう。デナーは恥ずかしさに耐え、行動を続けたことで先行者利益を手に入れた。愚かに見えるリスクを厭わない姿勢こそが、彼女にとって自信を育む実践の場となったのである。
ルール2:「自信は筋肉のように鍛えることが可能だ」
デナーは自信のあり方についても独自の見解を持つ。彼女は鏡の前で自己暗示の言葉を唱えたり、目標達成を頭の中でイメージすることを勧めない。むしろ、自信は経験を通じて獲得されるものだと考えている。「ある朝目覚めたら突然自信がついていることはない。自信は自然に身につくものではなく、自らの行動で手に入れるものだ。行動を重ねるほどにコツがつかめ、より上達していく」と彼女は語る。
例えば、自身のビジネスを初めてプレゼンする際にはぎこちないかもしれない。しかし、十回もすれば格段に洗練され、百回目には無意識でこなせるようになる。これこそが、経験を通じて培われる自信と能力である。こうして積み重ねられた経験は、能力の確かな証拠として確実に積み上がっていく。
セラピストでありエグゼクティブコーチでもある筆者は、クライアントに対し、自信を構築するには二つの主要なスキルが不可欠だと伝えている。一つは、デナーが指摘する通り、経験と挑戦だ。もう一つは、経験が不足している分野に挑む自分自身への思いやりだ。後者は、初心者である自分に現実的な期待値を設定し、間違いや知識不足を許容する姿勢を意味する。デナーがファッション業界の経験なしにnuudsを立ち上げた際、彼女は公の場で試行錯誤しながら学ぶことを自分に許した。そして、個々の失敗は災難ではなく、データとなった。能力を磨きながら不完全さを受け入れるというアプローチこそが、業界の部外者でありながらも、全財産を事業に投じる決断を可能にしたのである。
しかし、自信を得ても、恐怖が完全に消えるわけではない。デナーの次のルールは、恐怖を抱えながらも行動を起こすことの重要性に焦点を当てている。



