サイエンス

2025.10.24 15:15

時間は「刻まず」「量子挙動から直接」測定の未来? リュードベリ原子観察という方法

Getty Images

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時間の計測は常に「刻むもの」に依存してきた。振り子の揺れ、水晶の振動、そして現代の原子時計における原子の振動もその一例だ。しかし今回の画期的な発見は、時計を使わずに時間の経過を測るまったく新しい手法があることを示している。

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研究チームは、リュードベリ原子と呼ばれる特殊な原子の量子挙動を観察することで、時間の経過を追跡することに成功した。この成果は、私たちの「時間を測る」という概念そのものを根本から変える可能性を秘めている。

リュードベリ原子は、電子が原子核から遠く離れた軌道に押し上げられ、非常に高いエネルギー状態にある点で特殊な存在だ。科学者たちがレーザーでこれらの原子を刺激すると、電子は互いに重なり合う「波束」を生み出し、それらが干渉して独自のパターンを描き出す。

注目すべきは、この干渉パターンそのものが時間の経過を自然に刻んでいることである。開始や終了を示す必要はなく、パターンが示す形こそが経過時間を物語っている。まるで自然界が備えるストップウォッチのようだ。

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ScienceAlertによれば、この手法を用いることで研究者たちは、1.7兆分の1秒という極めて短い時間間隔を測定することに成功したという。

さらに興味深いのは、この手法が従来必要とされてきた「起点(zero point)」の問題を回避している点だ。通常、時間を測定するには開始時点を正確に知る必要がある。しかしこのシステムではスタートの合図は存在せず、経過時間を示す干渉パターンだけが残る。開始点と終了点を定義することが困難、あるいは不可能な量子実験においては、特に有用となる可能性がある。

この技術はまだ実験室段階にあり、これまでの実証は制御下のヘリウム原子に限られている。他のシステムや実世界への応用には時間がかかるが、その潜在力は計り知れない。従来の時計に頼らずに超高速現象にタイムスタンプを付けたり、従来の時間計測では追跡が困難なプロセスを測定したりすることも夢ではない。

すぐに腕時計が不要になるわけではない。しかしこの発見は、目の前で進行する量子プロセスから直接時間を測定できる可能性を示している。時間計測が単に時計の針の動きを追うだけでなく、宇宙の根本的なリズムを読み取る行為になる未来世界が垣間見える。


ScienceAlert:科学研究や発見に関する記事を配信する、独立系オンライン科学ニュースサイト

※本稿は英国のテクノロジー特化メディア「Wonderfulengineering.com」10月5日の記事からの翻訳転載である

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