サイエンス

2025.10.11 17:00

1938年に「永遠に姿を消した」フクロオオカミ、その最後の写真

フクロオオカミ(Shutterstock.com)

バス海峡に隔てられたタスマニア島は、フクロオオカミの最後の逃げ場だったが、植民地化の圧力は、やがてこの島の岸にも到達した。

advertisement

フクロオオカミの衰退

野生のフクロオオカミ、最後の写真(Unknown author)
野生のフクロオオカミ、最後の写真(Unknown author)

1800年代初めごろから、欧州から来た入植者たちはフクロオオカミを、新たに導入した家畜に対する脅威と見なすようになった。フクロオオカミによる大規模なヒツジの捕食があったことを示す証拠は現在に至るまで乏しいが、それにもかかわらず、フクロオオカミは害獣のレッテルを貼られた。1888年までに、タスマニア州政府は報奨制度を制定した。成体のフクロオオカミ1頭につき1ポンド、子ども1頭につき10シリングを出すというものだ。

それ以来、徹底した撲滅運動が続いた。その後の数十年で膨大な数が殺され、個体数は激減した。直接的な迫害に加えて、以下のようないくつかの生態学的圧力も、フクロオオカミの衰退に拍車をかけた可能性がある。

・土地開発と農業による生息地の喪失
・導入種(とりわけイヌ)、のちにはキツネとの競争
・病気の可能性。これにより、20世紀初めに生き残っていた個体が一掃された可能性がある

advertisement

散発的な目撃例はあったものの、最後に確認された野生のフクロオオカミは、1930年に射殺された個体だ。つまり、例の忘れがたい最後の写真のなかで、ウィルフ・バッティのとなりにいるフクロオオカミのことだ。

飼育されていた最後のフクロオオカミは、1936年にタスマニア州ホバートの動物園で死んだ(ベンジャミンと呼ばれることが多い)。1938年には、正式にフクロオオカミの絶滅が宣言された。

オセアニア──絶滅のホットスポット

フクロオオカミの絶滅は、オセアニアで展開されているさらに大きな危機を象徴している。オーストラリアと周辺の島々からなるこの地域では、哺乳類の絶滅率が、現代の世界では最も高い。欧州人の入植以来、オーストラリアだけでも、30種を超える哺乳類が姿を消した。

だが、なぜこの地域が絶滅のホットスポットになっているのだろうか? その答えは、この地域が進化上、隔離されていたことにある。オーストラリアの哺乳類は、有胎盤類の捕食者による圧力を受けずに進化した。欧州から来た入植者が、ネコやキツネなどの外来種を導入したとき、在来の野生生物は、進化によって身につけた防衛策を持っていなかった。

次ページ > フクロオオカミ絶滅の教訓

翻訳=梅田智世/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事