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3年前、暗号資産を基盤とする予測市場プラットフォームのPolymarket(ポリマーケット)は、米商品先物取引委員会(CFTC)の摘発で米国市場から退いた。その後、CFTCがノーアクション(=一定条件で当面は処分しないという事前通知。免許ではない)を出し、PolymarketはCFTC認可済みの取引所・清算機関QCEXを買収した。これにより、米国内で合法運営するための規制面と業務面の要件を満たした。
こうした再整備を経て、今やPolymarketはウォール街の本流に受け入れられた。ニューヨーク証券取引所(NYSE)を運営するインターコンチネンタル・エクスチェンジ(ICE)は10月7日、同社に20億ドル(約3040億円、1ドル=152円)を出資したと発表した。評価額は約80億ドル(約1.2兆円)。予測市場は「正当性へのお墨付き」を得て、機関投資家が正面から扱う段階に入った。
米国遮断と約2億1300万円の罰金を経て、再起に踏み出す
今回の出資は、Polymarketと同社創業者シェイン・コプランにとって劇的な再起を意味する。同プラットフォームは、未登録のデリバティブ(金融派生商品)のトレーディングを提供したとして米商品先物取引委員会(CFTC)から摘発され、2022年に和解の条件として米国ユーザーの利用を遮断し、140万ドル(約2億1000万円)の罰金を支払うことに同意していた。
これにより、Polymarketは自国の市場から事実上追放され、国外ユーザーだけを対象にサービスを続けていた。そしてコプランは、合法的に再び米国市場へ戻る道を模索していた。
この「規制の煉獄」にあった数年間で、彼の会社は消滅してもおかしくなかった。しかし、Polymarketはその時間を海外市場での実績作りに費やし、2024年の米大統領選など主要イベントを通じて取引総額を数十億ドル(数千億円)規模に押し上げた。そして今、Polymarketの予測結果は世論調査を一貫して上回る精度を示し、主流メディアや金融機関もそのオッズを「市場が示す有力な指標」として扱い始めている。
QCEX買収とノーアクションで規制基盤を整え、米国回帰の条件が整備
同プラットフォームは、米国市場への復帰にあたり、規制当局からの承認にとどまらず、一歩踏み込んだ対応をとった。Polymarketは、今回のICEによる出資の土台を築く戦略的な一手として、CFTCの認可を受けたデリバティブ取引所兼清算機関QCEXを1億1200万ドル(約170億円)で買収し、米国内で合法的に事業を運営するための規制上の枠組みを手に入れた。
その後、CFTCは9月にPolymarketに対して「ノーアクションレター(不訴追通知)」を発行し、米国市場への復帰を事実上認めた。この承認は、機関投資家の予測市場への関心の高まりを背景としたものだ。競合のKalshi(カルシ)は今年初めに20億ドル(約3040億円)の評価額を獲得し、連邦控訴裁の判断とCFTCの対応変更を受け、選挙などの政治イベント契約の上場に道が開けたとされる。



