サステナグロースカンパニーアワード2025では13の賞を設定し、さらに審査員特別賞を加え、合計14社が受賞企業に輝いた。後編では7社を紹介する。
世界中の人々の健やかな人生に貢献できるクラウドサービス
スモールビジネス賞
アガサ 代表取締役社長 鎌倉千恵美

「『Agatha(アガサ)』は、新薬開発の未来を拓く治験DXプラットフォームであると自負しています。医療機関と製薬企業の利用者が、治験・臨床研究の文書をクラウド上で共有・保存・管理することができるサービスです。日本では1,300以上の治験実施医療機関に導入されています」
2015年に鎌倉千恵美がヘルステックベンチャーを創業して、その社名を冠したクラウドサービスを開始した理由とは―。
「日本では治験や新薬の承認に時間がかかります。DXによって治験・臨床研究の効率化や省力化がかなうことは、患者さんに一日でも早く薬を届けることにつながります。また、日本中の研究機関から新しい治療法や薬が創出される仕組みができれば、世界中の人々の健やかな人生に寄与できます」
現在、「Agatha」は世界16カ国で展開している。本アワードでは「スモールビジネス賞」を受賞したが、伸びしろは無限大だ。
ニッチな技術を最大限に生かし岡山からグローバルに事業展開
ユニークビジネスモデル賞
萩原工業 代表取締役社長 浅野和志

「岡山県倉敷市に本社・工場を置く萩原工業は、ブルーシートに代表される合成樹脂製品のメーカーです。実は、国内で流通しているブルーシートの約95%が安価な輸入品。防災、建築・土木、農業などに用いられ、強度や耐候性が求められる高品質の国産品は、そのほとんどが萩原工業製です」
萩原工業の起源は、ござを製造する会社として1892年に創業した萩原商店。1962年、合成樹脂製の糸をつくる会社として分社化で誕生したのが萩原工業だ。代表取締役社長の浅野和志は広島大学工学部を卒業後、この歴史あるものづくりの系譜に参画した。
「萩原工業は60年代から一貫して合成樹脂の糸『フラットヤーン』に関連する事業に特化してきました。その技術を活用した製品は、ほかにバルチップ(コンクリート補強繊維)があります。バルチップは8割が海外向けということもあり、私たちは世界14カ国に生産・販売拠点をもっています」
中堅・中小の成長企業にフォーカスしてサービスを確立
カスタマーデライト賞
ユナイトアンドグロウ 代表取締役社長 須田騎一朗

今や、多くの事業がIT技術なしでは成り立たない状況だ。経済産業省の発表では、2030年には最大79万人のIT人材が不足するという試算結果が示されている。
「05年の創業以来、私たちは中堅・中小の成長企業が抱える悩みに的を絞ってきました。それはコーポレートIT(情報システム)部門の人材不足・知識不足・ネットワーク不足です。これらを時間・経験・人脈のシェアによって解決していくのが、『シェアード社員®︎』です。各社のニーズに合わせて、月1時間から週5日常駐まで時間単位で柔軟にサポートしていきます」
「法人数の99%、雇用の70%を占める中小企業が元気になれば、日本全体が元気になる」という強い想いを抱いてユナイトアンドグロウを創業したのが、須田騎一朗だ。現在、売上高は15期連続で増加し、1年以上の利用継続率は約80%を記録。成長企業の成長ドライバーとして機能している。
マネジャー職を撤廃して自律・分散・協調の組織へ
エンプロイーサクセス賞
ネットプロテクションズホールディングス 代表取締役社長 柴田 紳

購入者には安全・便利・ポイントが獲得できてお得な通販を、加盟店には売り上げ増・新規顧客開拓・未回収リスクからの解放というメリットを。これらの価値が同時提供される後払い決済サービスを日本ではじめて手がけたのがネットプロテクションズホールディングスだ。
「私たちは不要な上下関係・競争意識を排除する人事制度を導入しています。変化への対応力と創造性を事業の基盤とするために、採用するのは常識を疑い内発的エネルギーで行動する『変革の思想をもつ人材』です。そして、『360度評価』『配属/異動は自己決定』『情報は全面開示』『新卒は全員IT研修』といった取り組みで社員の自走を促しています」
新人も1年目からリーダーとして経験を積むことができると、代表取締役社長の柴田 紳は胸を張る。結果として、新規事業の多くが若手のボトムアップで生まれ、黒字化まで挑戦する文化や働きがいが醸成されているのだ。
事業の成長が子育て支援・女性活躍・保育人材の定着に直結
社会貢献インパクト賞
BABY JOB 代表取締役 上野公嗣

そのサービスの名は「手ぶら登園」。保育施設におむつ・おしりふきが直接届くので、保護者は毎日のおむつ用意の負担から解放される。保育士にとっても、名前の書かれたおむつを個別管理する手間が省ける。保護者と保育士の双方に時間的・心理的な余裕が生まれることには、大きな社会的意義がある。このサブスクサービスの開始と拡大に心血を注いできたのが、BABY JOBで代表取締役を務める上野公嗣だ。
「このサービスは、『日本サブスクリプションビジネス大賞2020』でグランプリを受賞したことで、一気にユーザー数が拡大しました。現在では、8,400施設・13万人にご利用いただくサービスに成長しています。しかし、まだ保育施設が日本全国に4万ほどあるなかの20%程度です。私たちは、すべての人が子育てを楽しいと思える社会の実現を目指しています。海外展開も含めて、まだまだ走り続けていく必要があります」
ワンストップ体制で市場成長率の10倍以上の業績アップを実現
業績アップ賞
FDS 代表取締役 福地隆史

2001年の設立以来、24期連続で増収増益を達成。競争の激しい不動産業界で、サステナグロースを遂げているのがFDSだ。
「日本における共同住宅(マンション・アパート)の市場規模は、2019年から24年まで年平均成長率3.1%で成長してきましたが、FDSは同じ期間に36.2%の業績アップを実現しています。これは、仕組みと、その仕組みを動かしていく人材が整っていることに最大の要因があると考えています」と代表取締役の福地隆史は胸を張る。
「私たちは『不動産分譲事業』『不動産賃貸事業』『建設事業』をグループで効率的に展開しています。土地仕入れから企画開発、設計、施工、販売、賃貸管理といった全局面で一切の妥協を許さないワンストップ体制を築いているのです。部門をまたいだ共創により、品質・スピード・コストコントロール・顧客満足のすべてを高いレベルへと引き上げることができています」
お客様のお困り事に向き合う老舗のレジリエンスカンパニー
審査員特別賞
カクイチ 代表取締役社長 田中離有

創業139年の老舗でありながら、ベンチャー企業の気概をもって次々と新しい課題に挑んでいる。その存在感は、サステナグロースカンパニーアワードの各賞の枠には収まりきらない―。こうした理由から、審査員から特別賞を授与されたのがカクイチだ。4代目が同社のこれまでのあゆみの一端を教えてくれた。
「創業は1886年。私の曽祖父が農機具を扱う銅鉄金物商『田中商店』を創業したのが始まりです。戦争の時代になると金物が取り上げられたため、農業用ガレージとホースの商いを始めています。ガレージとホースは、今も私たちの主要商材です。2011年の東日本大震災では、母屋が倒壊したためにガレージで避難生活をしていたというお客様もいらっしゃいました。そこでの気づきを経て、2013年からは自律分散しながら助け合えるエネルギーを拡大するべく、私たちがお売りしてきたガレージの屋根を借用して太陽光発電事業を始めています」
白熱の「サステナグロースカンパニーアワード2025」審査会“持続”かつ“成長”できる会社の条件とは?
「サステナグロースカンパニーアワード2025」受賞企業決定 信念をオンリーワンの価値に変え未来を拓く14社
【前編】新たな価値を創出し持続的成長を描く14社〜サステナグロースカンパニー2025受賞企業発表
https://sgca.funaisoken.co.jp



