企業価値22.8兆円を達成し、エクの資産も1.6兆円規模に
エクは、好調な業績を残してCEOを退任することになる。Spotifyの株価はここ1年で2倍となり、SS&P500の上昇率16％を大きく引き離した。同社の時価総額は1500億ドル（約22.8兆円）を突破し、ストックホルムの労働者街ラーグスヴェード出身で大学中退のエクの純資産は、フォーブスの推計で103億ドル（約1.6兆円）に達している。
アクティブユーザー数は7億人、有料会員2億7600万人 音楽業界の再成長を牽引
現在、Spotifyの提供楽曲数は1億曲。アクティブユーザー数は7億人、そのうち有料会員は2億7600万人に達する。2024年の売上高は183億6000万ドル（約2.8兆円）を突破した。
Spotifyの成長は、かつて違法コピーの横行で停滞していた音楽業界の再生を後押しした。2011年、Spotifyが米国市場に参入した当時の、レコード業界の売上高は約150億ドル（約2.3兆円）で、その10年前の240億ドル（約3.6兆円）から4割減少していた。しかし2025年の現在、Spotifyのようなストリーミング企業の台頭によって音楽市場は大きく回復。年間の録音音楽の売上高は約300億ドル（約4.6兆円）規模に達し、そのうち200億ドル（約3兆円）をストリーミングが占めている。Spotifyは売上の70％をアーティストや権利保有者に還元しており、2024年の支払い総額は100億ドル（約1.5兆円）に上った。
同社の次期CEOとなるノールストロムとセーデルストロムは、ユーザー数と売上の拡大を目指しており、とりわけアフリカやアジアの新興テクノロジー市場への進出に注力している。「今や世界人口の3％がSpotifyに登録している。この数字を10％や15％に引き上げていくことも、もはや夢ではない」とノールストロムは語る。
一方、技術部門を率いるセーデルストロムは、人工知能（AI）が音楽の楽しみ方に大きな変化と新たな機会をもたらすと見ている。「スマートフォンへの移行と同じような転換が起きるだろう。ユーザーの音楽との関わり方が変わることで、新しい流通の形や、まったく新しいデバイスが生まれるかもしれない」。
