ウクライナへの侵攻を続けるロシアは、再び危険な一線を越えた。十数機の無人機(ドローン)を北大西洋条約機構(NATO)の領空に送り込んだのだ。
ポーランドは先月10日、19機のロシア製無人機が領空を侵犯したことを確認し、うち4機をNATOの支援により撃墜した。オランダのF35戦闘機が緊急発進し、ポーランドの首都ワルシャワとウクライナとの国境に近い南部ジェシュフ上空の空域が閉鎖され、ポーランド国民には屋内退避勧告が出された。
これは単なる偶発的な事故ではない。これは意図的な挑発行為であり、2022年のウクライナ侵攻開始以降、ロシアによるNATO領空への最も深刻な侵犯だった。
この事件についてロシア側は、ポーランド領内を「破壊の対象として標的にはしていない」と説明した。ロシアの従属国であるベラルーシも、無人機が単に「方向を誤った」だけだと主張している。しかし、侵入した無人機の数や移動方向、そして作戦の意図的なタイミングは1つの結論を示している。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、NATOの防衛体制を試しているのだ。同大統領はどこまで踏み込めるのかを試しながら、NATOがひるむかどうかを見極めている。
これを受け、ポーランドのドナルド・トゥスク首相は「第二次世界大戦以来、最も開戦に近づいている」と警告した。まさにその通りだ。だからこそ、NATOは断固たる態度を取らなければならない。慎重な言葉ではなく、さらなる侵略の代償についてロシア側に疑念を残さないような、明確な行動を示すべきだ。
NATOの信頼性こそが、この問題の核心だ。同機構の安全保障は「加盟国1国への攻撃は全加盟国への攻撃と見なす」とするNATO条約第5条に基づいている。ポーランドは第5条を発動していないが、NATO史上8回目となる第4条に基づく協議の要請によって、同国はこれが単発の事件ではないことを明確にした。
ロシアは不確実性を探しており、見つけたものは何でも利用するだろう。同国は2年間にわたり、ミサイルや無人機の「偶発的な」越境飛行でNATOの対応を試し、弱点を探ってきた。現在では、ロシアの無人機は1台や2台ではなく、20台前後にまで増えている。もしNATOが以前のように自制をもって対応すれば、さらなる挑発を招くだけだ。
NATOは何をすべきか
まず、NATO加盟国はレッドライン、つまり明確な一線を引かなくてはならない。無人機やミサイル、航空機が許可なくNATOの領空に侵入した場合、敵対的な行為と見なし、直ちに撃墜するのだ。例外は認めない。釈明も通用しない。プーチン大統領が事前に結果を認識できるよう、NATOはこの方針を公に宣言する必要がある。



