欧州

2025.10.08 11:00

NATOはロシアに対して「レッドライン」を引くべき 戦争拡大を防ぐために

ロシアの首都モスクワ上空を飛行する戦闘機。2025年5月9日撮影(Contributor/Getty Images)

第二に、NATOはより多くの部隊を前進させなければならない。これは、ポーランドとバルト三国上空で24時間体制の戦闘航空哨戒を行うことを意味する。加盟国の戦闘機部隊や給油機、空中早期警戒機はこれを強化する。また、ポーランドの防空網の隙間を埋めるため、追加の地対空ミサイル部隊を配備し、それらをNATOの指揮統制網に完全に統合することが必要だ。

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第三に、NATOはウクライナへの近代的な空軍力の移転を加速させなければならない。NATO領空を守る最善の方法は、ロシアの無人機とミサイルが国境に到達する前に阻止することだ。そのためには、ウクライナに供与するF16戦闘機や長射程地対空ミサイルなどを追加し、ロシアに対する使用に関しては制限を撤廃する必要がある。ウクライナの防空を支援するのは単なる慈善活動ではなく、集団防衛なのだ。

第四に、NATOは直接的な報復措置を準備しなければならない。ロシアが無人機でNATO領空を侵犯し続ける場合、NATOはロシアまたはベラルーシ国内の無人機発射基地や管制局に対する反撃の権利を留保すべきだ。これは事態の拡大を急ぐものではない。これは意図的な挑発の代償がNATOではなく、プーチン大統領自身に降りかかることを明確にするものだ。代償が大きいことを把握しない限り、同大統領はNATOへの挑発をやめないだろう。

プーチン大統領が尊重するのは力だけ

NATOに自制を求める声もあるだろう。こうした人たちは、ロシアの無人機による侵入は単なる誤りで、NATOは戦争が拡大するリスクを冒すべきではないと主張する。しかし歴史が示すように、攻撃を抑制しないと、さらなる攻撃を招くだけだ。プーチン大統領が尊重するものはただ1つ――それは力だ。ためらいを感じると、同大統領はさらに突き進む。断固たる反対に直面した時にだけ、考え直す。

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これはNATOを戦争に引きずり込むことではない。むしろ戦争を防ぐことについて議論しているのだ。紛争の拡大を防ぐ方法は、NATO加盟国が自国を即座に、断固として防衛するということをプーチン大統領に示すこと。それが抑止力の本質だ。

これはNATOにとって決定的な瞬間となる。NATOがためらいを見せれば、プーチン大統領は弱さを見抜き、圧力を強めるだろう。反対に、NATOが明確かつ結束して行動すれば、同大統領は考えを改めざるを得なくなる。現在、NATOの信頼性が危機に瀕しており、欧州、ひいては米国の安全保障も危ぶまれている。

NATOの領土は神聖不可侵であるという明確なメッセージを、ロシアに伝える必要がある。これ以上の領空侵犯は、一切許容しない。もしプーチン大統領が再びNATOを試そうものなら、その結果は同大統領自身に降りかかるかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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