「〇〇スタン」と聞くと、多くの人が緊張した表情になる。アフガニスタンやイランの近くと聞けば、なおさらだ。だが、先日12日間にわたって訪れたウズベキスタンは、その先入観を大きく裏切る国だった。女性二人で夜道を歩けるほど治安が良く、新幹線やタクシーアプリが整備され、そして何より、人口の多くがイスラム教徒にもかかわらず、 観光地のレストランでは当たり前のようにビールやワインが提供されている。
なぜそんなことが可能なのか。その背景には、ウズベキスタンという国が持つ「クロスカルチャー」の強みがある。
数字で証明される「世界最高レベルの安全性」
ウズベキスタンが掲げる治安の良さは、データでも裏付けされている。外務省の危険度は国境付近以外はレベル1(最低レベル)で、観光地では女性だけでも安心して歩くことができる。在日ウズベキスタン大使館によれば2023年の「安全認識指数」は世界第1位(121カ国中)にランクされ、国連の「国際安全観光コード」の起草を主導するなど、治安そのものを国家ブランドとして国際発信している。
交通の便の良さにも驚かされた。観光都市ではタクシーアプリ「Yandex GO」が普及し、10~20分の距離なら1~2ドル、空港から市街まで1時間乗っても10ドル未満。都市間を結ぶ高速鉄道「アフラシャブ号」は、首都タシケントとサマルカンド、ブハラを数時間で結び、近くヒヴァまで延伸予定だ。ユネスコ世界遺産都市を数時間で移動できるようになり、憧れのシルクロード観光が格段に容易になった。
この安全性とインフラ整備が、経済効果にも直結している。2014年にわずか180万人だった外国人観光客は、2024年には1000万人を突破し史上最多を記録。日本からも2024年に21240人、2025年の8カ月だけで18633人が訪れるなど急増している。日本から首都タシケントへは、ウズベキスタン航空の直行便が週2便、飛行時間も8~9時間ほど。シルクロードの交易地がここまで近くなったと知れば、いにしえの旅人はさぞ驚くことだろう。



