食&酒

2025.10.10 14:15

「客が忘れた帽子を6時間かけても届ける」。中央アジアにも『OMOTENASHI』の国があった

MSA Family Wineiryのカベルネ・ソーヴィニヨン。ヒヴァのレストラン「ヒヴァ・ムーン」にて

ウズベキスタンには130以上の民族が共存している。これは近年の移民流入ではなく、シルクロードの要衝として商人、学者、巡礼者がアジア・中東・ヨーロッパから集まってきた歴史的な結果だ。交易は信頼と協力に依存し、対立は商業に不利益とされてきたため、寛容と共存の文化が何世紀にもわたって育まれてきた。

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この多様性こそが、現在の観光競争力にもつながっている。訪問者は、世界遺産の荘厳な建築はもちろんのこと、刺繍や織物、陶器といった工芸品、多彩な料理や音楽を一つの国で体験でき、何世紀にもわたる文化交流が生み出した歴史を五感で感じることができる。

伝統刺繍スザニや絨毯は、お土産としても人気だ
伝統刺繍スザニや絨毯は、お土産としても人気だ

ウズベキスタンに根付いた「メフモンドゥストリク(客人を敬う伝統)」は何世紀にもわたり受け継がれており、今日では訪問者を迎える際の基本姿勢となっている。制度的な安全対策に加え、この文化的背景が旅行者に「心から歓迎されている」という印象を与えるのだ。まさに、日本の「おもてなし(OMOTENASHI)」文化と通底するものがないだろうか。

筆者の場合も、砂漠の僻地で忘れた帽子を6時間かけて別の都市まで届けてくれたり、帰国後に気づいた忘れ物を1週間で国際配送してくれたりと、ビジネスを超えた心遣いに胸を打たれた。「こうした一人一人の体験談が口コミやSNSを通して広がり、公式の施策を裏付ける効果的な手段となっている」と大使館は分析する。

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日本が学ぶべき「文化摩擦を資産に変える」戦略

イスラム的な価値観を大切にしつつも、ワインを経済資源と位置づけ、外貨獲得につなげる「クロスカルチャー」の成功例がウズベキスタンといえる。

日本も少子高齢化や労働力不足に直面し、いまや海外市場や多様な人材との共存が避けられない。宗教や文化の"いいとこ取り"を得意とする日本社会は、本来その適応力を備えているはずだ。仏教国でありながらクリスマスを祝い、神社で初詣をしてから教会で結婚式を挙げる柔軟性こそ、グローバル経営における競争優位の源泉となり得る。

異文化を共存させ、その多様性を経済的価値に転換する──これこそが、グローバル化の次の段階で求められる経営戦略なのかもしれない。

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文=水上彩 編集=石井節子

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