数千年の歴史を持つワイン文化
こうした観光戦略の一環として、ワインも位置づけられている。ウズベキスタンの人口の約9割はイスラム教徒だが、街中のレストランでは地元産ワインやビールが自然に並ぶ。現存する国内最古(1868年設立)のホブレンコワイナリーはサマルカンドの観光名所として人気を誇り、三千本以上に及ぶワインコレクションは、貴重な文化財として国の遺跡にも指定されている。
近年ではタシケント郊外にある「Uzumfermer」と系列の「MSA Family Winery」が、Decanterをはじめ国際コンクールで受賞を果たし頭角を表しているほか、南部スハンダリヤ地方の「MARO Wines」やSultanで知られる「Sulton Sharbati」も、カベルネ・ソーヴィニヨンなど国際品種と地品種を使ったプレミアムワインで評価が高い。
2021年大統領令において、政府は強力なワイン支援策を打ち出した。国産ワインの物品税を大幅に軽減するほか、オーク樽など輸入資材の関税を期限付きで撤廃。ブドウの苗木・灌漑設備への補助金や輸出業者への補助金を設け、ワイン産業を積極的に後押ししている。
これは歴史的にみれば必然といえるだろう。実はウズベキスタンには、地中海やコーカサス諸国と同様に古代文明の象徴としての豊かなワイン文化が根付いてきた。中央アジアのブドウ栽培は数千年の歴史を持ち、ゾロアスター教やヘレニズム期の遺跡からは、ワインがシルクロードを通じて交易されていた証拠が見つかっている。
その歴史に誇りを持ち、現在でもアルコールは「文化遺産の一部」として位置づけられ、観光資源としても活用されているのだ。リッチでスパイシーな赤ワインは、名物シャシリク(ケバブ)にもよく合い、旅の思い出を胃袋に刻んでくれる。
130の民族が共存 クロスカルチャーから日本が学べること
ウズベキスタンの街を歩くと、中央アジア特有の多様性を肌で感じる。トルコ系の顔立ちからロシア系、アジア系まで混在し(ともに旅した日本の友人はカザフスタン人に間違えられていた)、言語もウズベク語・ロシア語・タジク語に加え、観光地では英語やときに日本語も飛び交う。実際、サマルカンド国立外国語大学で日本語を専攻したという20代の女性は、「サマルカンドの人たちは、だいたい三言語は話せます」と流暢な日本語で語ってくれた。


