ウクライナが新たに投入している攻撃ドローンは、こうした脆弱性を突きやすいと考えられる。改良型「リューティー」のようなウクライナの新型ドローンは、自律性や高度な検知システムを備え、終末誘導時に人間による直接制御をあまり必要としない。これらのドローンは、軍用列車や燃料列車が通過するタイミングを見計らって、GPS(全地球測位システム)誘導で線路に向かうことができる。列車の位置を特定すると、搭載するAIシステムで終末誘導され、限られた弾頭量で最大限の影響を与えられる最も脆弱な箇所に突っ込む。
複数のドローンを連携させれば、一度の攻撃で大きな被害を与えられ、列車を丸ごと破壊することも可能だろう。
ロシアによる対処策
こうした攻撃が軍事と経済の両面に与えている影響を考慮し、ロシアは列車の対ドローン防護手段を開発している。ソーシャルメディアには、ウクライナ側の機関車がドローン防護用のケージを取り付けて走る様子を映した動画が投稿されており、ロシア側も同様の対策を採用しているか、今後採用する可能性が高い。
より洗練された防護手段が整うまでの間、ロシアは列車の運行時間を不規則にしたり、迂回経路を走らせたりすることで、列車の位置を予測されにくくしようと試みる可能性もある。また、攻撃に遭った際の被害を抑えるために、貨物を複数の列車に分散させるといった措置も考えられる。
より長期的な対策としては、ロシアは列車に対ドローンシステムを搭載する必要が出てくるだろう。ただ、従来型の電子戦システムは、指令信号への依存度が低いウクライナの新型ドローンに対しては効果が限定的とみられる。ロシアはそのため、列車に迎撃ドローンや、接近するドローンを探知・追跡・撃墜できる移動式防空プラットフォームといったキネティック(動的)な防御手段を装備させるかもしれない。もっとも、こうした装備の導入にはかなりのコストと時間がかかるだろう。
ウクライナはその間も、戦略攻撃作戦の一環でロシアの列車に対する攻撃を続けていくと予想される。これらの攻撃は、ロシア軍の補給を妨げて攻勢を鈍らせると同時に、重要インフラを損傷させて経済を圧迫している。軍事と経済の両面におけるこの重大な脆弱性を突くことで、ウクライナはロシアの軍事的有効性を低下させ、クレムリンに交渉を検討させる圧力を強めることができる。


