ロシアの軍事・経済における鉄道の重要性
鉄道はロシアの軍事作戦の継続にきわめて重要な役割を果たしている。軍隊が戦場の作戦ペースを維持するには、弾薬や燃料、重装備といった物資の安定した供給が必要になる。ロシアが今年の夏季攻勢のためウクライナに増派したことで、補給物資の需要はさらに増大した。
大量の補給物資の迅速な長距離移動を可能にする輸送手段が鉄道である。ロシア軍の兵站はこの戦争を通じて、ウクライナで占領した地域につながる鉄道網に大きく依存してきた。とりわけ燃料列車は、装甲車両や砲システムを動かす必要から不可欠なものである。したがって、ウクライナ軍によるこれらの列車に対する攻撃は、ロシア軍の前線での作戦継続能力に直接影響を与えることになっている。
鉄道輸送はロシアにとって、軍事だけでなく経済全体にとっても重要なものである。ロシアは国土が広大なため、天然資源や工業製品、その他の商品の長距離輸送を鉄道網に頼る。鉄道は遠隔地の油田・ガス田、鉱業地域、農業地帯を加工施設や輸出拠点と結んでいるため、国内の流通だけでなく外国との貿易でも不可欠なインフラになっている。
鉄道はとくに、ロシア経済の屋台骨である石油の輸送できわめて重要な役割を果たしている。ウクライナが縦深打撃能力を拡大するにつれて、現在の製油所攻撃と同じように、広大な鉄道網への攻撃も今後さらに増えていくだろう。
列車の脆弱性
こうした重要性にもかかわらず、ロシアの列車はドローン攻撃に対して本質的に脆弱である。列車は、固定された線路という直線的な経路を走る大きな目標であるため、ドローンにとっては概して狙いやすい。列車の経路や運行スケジュールは公開情報から推定できる場合が多い。
走行中、狙いすまされた攻撃を受ければ、車両が脱線したり、貨物が破壊されたり、あるいは線路が損傷したりする。なかでも、大量の油を積んだ列車では被害が大きくなる。移動中の列車は、堅牢な構造物で覆うこともできなければ、貯蔵施設や製油所を守っているような固定型の防空アセットも利用できないので、防御するのは難しい。


