次世代ロボット開発と火星探査の可能性
ISSで試験されたロボノートは現在、スミソニアン国立航空宇宙博物館に収蔵されている。NASAの研究者たちは、将来の火星ミッションへの布石として、ISSの外で行われる高リスクの船外活動で宇宙飛行士に同行できる次世代ロボットの開発を目指していると語る。
いつか火星周回機に搭乗する宇宙飛行士が、ロボット部隊、すなわち火星の砂丘に沿った着陸候補地をマッピングしその3D画像を送信するために展開される「アバター」を遠隔操作できるようになるかもしれない、とNASAエイムズ研究センターやカリフォルニア工科大学付属のジェット推進研究所(JPL)の研究者はいう。
将来の火星ミッションでロボットと人間の探査チームの連携が進むなかで、ヒュービッキ教授はこう述べる。「人間の付き添いなしでロボットを火星に送り込み、人間の居住施設を建設させるという興味深い研究アプローチは存在しますが、それらの解決策はまだ構想段階にすぎません」。
人間をモデルにした将来世代のロボット、すなわち創造者である人間と同等以上の頑丈さを備えたロボットは、「危険な環境で優れた能力を発揮する可能性を秘めています」。
「その理論的な活用事例は、別の惑星でも想定できます」と彼は言う。
月での試験運用を推奨するヒュービッキ教授
「人間が行くには危険すぎる場所に、人型ロボットを投入できるのでしょうか? 理論上はもちろん可能です。それが私の願いであり、この分野の多くの研究者の願いでもあります」。
ヒュービッキ教授は、自身の「人間の正確な分身ロボット」の創出に関する研究の一部は、燃え盛る超高層ビルに突入して中に閉じ込められた人々を救助し始める「鋼鉄のドロイド」の初期対応部隊を創設することを目指すものであり、こうしたスーパーヒーロー的な役割は火星にも応用可能だと述べる。
月特有の課題はあるが、技術的に近道
その一方で同氏は、イーロン・マスクに対し、地球から最大4億キロメートル離れた「赤い惑星」へOptimusという宇宙飛行士ロボを打ち上げる前に、より近い目的地でテストすることを検討すべきだと提案する。
「もし私が宇宙用ヒューマノイド計画の責任者なら、火星に送り出す前に、将来の月探査ミッションでの試験配備を推奨するでしょう」。
「もちろん、月には月特有の課題があります。月の塵は鋭くギザギザした粒子の悪夢のような集合体で、機器を急速に摩耗させます」。
「しかし、月は火星よりも近く、技術的に熟練した人材を配置しやすく、交換部品の輸送もはるかに容易です」。
SpaceXはすでにNASAと、2027年から月の周回軌道から月の南極へ宇宙飛行士を輸送するための、総額40億ドル(約5900億円)以上に相当する2つの契約を締結している。SpaceXの月着陸船である巨大なStarshipのスーパーカプセルは、100人の宇宙飛行士を輸送できるよう設計されており、NASAの関係者とともに、Optimusの部隊を月面着陸へ迅速に送り込むことも可能だ。


