2025年を節目に、さらに加速する世界的な潮流「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」。Forbes JAPAN12月号別冊 NEXT GX STREAM 日本発「GX経済圏」の衝撃では、GXの最前線で活躍するプレーヤーに光をあて、日本がGXをリードするための道筋をお届けする。
音楽プロデューサー・小林武史とアスエネ創業者・西和田浩平の気候変動勉強会や、GXに本気で取り組む日本企業のGX RANKING、次世代のスタートアップを選出したNEXT GX STARTUPS 50など、GXの現在地がわかるような様々なコンテンツを特集する。
2015 年に採択されたパリ協定により、各国の政府が、企業に温室効果ガス(GHG)排出量を含む情報の開示や報告を求めたり、金融市場を通じて資金調達を促したりしている。GHGの排出量の算定・報告を取り扱う企業の需要が高まるなか、ある米スタートアップが、「規制対策」よりも、経営者を動かす「経済合理性」のほうに目を向けて製品・サービスを開発している。
地球温暖化を背景に、企業の脱炭素化を促す「GX」は、もはや単なる社会貢献活動ではなく、企業の生存と発展をかけた経営戦略そのものとなっている。各国の政策や市場からの要請も厳しさを増すなか、GHG(温室効果ガス)排出量のデータに基づいた意思決定が不可欠である。
こうした大きな潮流のなか、ある米スタートアップが注目を集めている。24時間365日体制でGHG排出量とエネルギー消費量を追跡・管理・報告するプラットフォームを提供する「NZero」だ。
同社が異彩を放つのはアプローチにある。多くの企業がGHG排出量の算定・報告に主眼を置くなか、NZeroは創業当初から、その先にある「行動変容」と「意思決定の最適化」を見据えていた。
「私たちは、GHG会計分野の多くの企業とは異なる根本的な考え方から出発しました」
共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のジョシュ・ウェバーがそう語るように、NZeroの核心は、単なる会計ツールに留まらない点にある。電力システムや金融の枠組みといった「非常に複雑なシステムの挙動をモデリング」し、どのエネルギーをいつ、どれだけ使うか、顧客の選択が、自社の財務と環境にどのような影響を与えるかを正確に理解できるようにすること。これこそがNZeroの提供する独自の価値なのである。



