アスエネとタッグを組む道を選んだ理由
米タイム誌やファスト・カンパニー誌から優良企業として選出されるなど、急成長を遂げていたNZeroだが、2025年にアスエネによるM&Aを受け入れ、同社グループの一員となる道を選択した。ウェバーは、アスエネへの合流を「影響力を加速させる素晴らしいパートナーシップ」と語る。NZeroが強みとするScope1・2(事業者自身の排出)の削減ソリューションと、アスエネが得意とするScope3(サプライチェーン排出量)を含む包括的なプラットフォームを組み合わせることで、顧客のあらゆる気候変動課題に応える「ワンストップショップ」が完成すると確信したからである。
この統合は、単なる機能補完に留まらない。米国市場に強固な基盤をもつNZeroと、日本をはじめアジアで急成長するアスエネが一体となることで、グローバルリーダーを目指すための体制が整ったことを意味する。
一方で、世界の政治・経済情勢は不確実性を増している。特に米国では、政権によって気候変動政策が大きく揺れ動く。しかしウェバーは、たとえ政権が変わり、連邦政府レベルでの気候変動対策が後退したとしても、GXの潮流は止まらないと断言する。
「いくつか不変の要素があると思います。一つは、エネルギーインフラが抱える圧力です。次に、経済的な選択をすることの重要性は、不確実な時代においてはさらに増すかもしれません」(ウェバー)
AIの普及などによる電力需要の急増は、老朽化した米国の送電網に深刻な負荷をかけている。また、不確実な時代であるからこそ、企業は自社でコントロール可能なエネルギーコストの削減にいっそう注力せざるをえない。
さらにグーラは、連邦政府が後退すると、逆に州や地方自治体レベルでの取り組みが活発化する傾向がある点も指摘する。カリフォルニア州が導入した企業への情報開示を義務付ける法律(SB 253)はその一例だ。政治の風向きにかかわらず、脱炭素化と経済合理性の追求という不可逆的なトレンドは、今後もビジネスの現場を動かし続けるに違いない。
企業が排出量という「結果」だけを見て一喜一憂する時代は終わった。エネルギー消費という「プロセス」のデータを詳細に把握し、科学的・経済的合理性に基づいて意思決定する──。その地道なアプローチこそが、持続可能な未来への最も確実な道筋なのかもしれない。
Forbes JAPAN 12月号別冊 NEXT GX STREAM 日本発「GX経済圏」の衝撃 購入はこちら



