「共食い」に対して、私たちは本能的な拒否感を覚え、野蛮さや、絶望的な状況を想起する。しかし動物界の多くの種にとって、同種の他個体を食べることは驚くほどありふれた現象であり、しばしば戦略的行動でもある。
同種他個体の捕食は、時には単純に、避けては通れない生存競争が引き金となって起こる。また、交尾を終えた個体の一部が、こうした不気味な行動をとることもある。
共食い傾向が生存に役立っている3種の動物たち――シロワニ、キンスジアメガエル、オオヒキガエル――を、以下に紹介していこう。
シロワニ:戦いは誕生前に始まる
シロワニ(学名:Charchariaas taurus)は、世界の温暖な沿岸域に分布する、全長3mを超えるサメの1種だ。このサメの並外れた繁殖戦略は、子宮内での共食いから始まる。シロワニのメスは、しばしば複数のオスと交尾するため、父親が異なる複数の胚が発達することがある。
母親の2つの子宮では、それぞれの内部で最大の胚が、一定のサイズに達した時点で、より小さなほかの胚を食べはじめる。このプロセスは「子宮内共食い」と呼ばれる。母親の胎内には、父親が異なる複数の胚が存在することがあるが、この陰惨な競争により、誕生する子の父親は通常1匹だけだ(子宮が2つあるため、最終的には2匹が誕生するのが一般的)。
研究者たちは、DNAプロファイリングの手法でこの現象を分析し、母親と複数の子の遺伝的関係を検討した。その結果、メスの60%が複数のオスと交尾したにもかかわらず、父親が異なる複数の子が誕生したケースは全体の40%にとどまったと、2013年6月に学術誌『Biology Letters』に掲載された論文で述べられている。
過半数のケースでは、生き残った子は、同じ父親をもつきょうだいだった。では、ほかの胚はどうなったのか? おそらくは、成長するチャンスすら与えられないまま、餌食になったと見られる。



