ロシアは6月以降、ウクライナに対する攻撃にジェット推進式のシャヘド型ドローン(無人機)を投入している。先ごろほぼ無傷の機体が初めて回収され、ウクライナ国防省情報総局(HUR)がこのほど、3Dモデルや搭載されている電子機器の分析を含む詳細な情報を公表した。
技術的に大きなブレイクスルーと呼べるものは見当たらないものの、この新型ドローンがより高速で、それゆえより危険な兵器への移行を指し示しているのは確かだ。
強化されるシャヘド攻撃
ロシアはイランが開発した「シャヘド136」攻撃ドローンのコピーをライセンス生産しており、それを「ゲラニ-2」と名づけている。標準型はプロペラを駆動する2ストロークエンジンを搭載しており、ウクライナではその独特の飛行音から「モペッド(原付自転車)」などとも呼ばれている。
巡航速度が時速190kmかそこらのシャヘドは、個別に見れば地上からの撃墜が難しい目標ではない。ウクライナではとくに、ドイツ製のゲパルト自走対空砲が迎撃に顕著な成功を収めてきた。だが、シャヘドは大量に発射される。一晩に800機も飛来すると、一部はウクライナの防空網をすり抜けてしまう。
ウクライナ空軍の発表に基づく集計によると、8月のシャヘド型ドローンの迎撃率は83%前後となっている。
ロシアはシャヘドの突破率を高めるべく、戦術を繰り返し変更してきた。たとえば、非常に低い高度から非常に高い高度への飛行高度の切り替え、波状攻撃、既知の防空網を回避する迂回ルートの選択などだ。また、設計の改良も重ねていて、夜間に発見されにくくする低視認性の黒い「ステルス」塗装、ジャミング(電波妨害)に耐性のある航法システム、データリンクを利用して攻撃中に飛行計画を書き換える仕組みなどを導入している。
ジェットエンジンの採用によるドローンの高速化というのは自然な改良ではあるものの、コストは高い。イランの場合、2023年にジェット推進式の「シャヘド238」を公開し、2024年9月にはそれと別のジェット推進式シャヘド136を発表している。このテーマについて詳しく調べたアナリストのシャフリヤール・パサンディデによると、イランのジェット推進式ドローンは少なくとも3種類存在するようだ。ロシアの新型ドローンはそれらとはまた違っている。特徴的なのは、中国製のジェットエンジンを搭載していることだ。



