ビーチの砂粒の隙間にすっぽり収まり、それでも余裕があるほど小さいのに、とてつもなく強じんで、宇宙の過酷な真空空間でも生き延びられる生き物を想像してほしい。想像できなくても大丈夫、そうした生き物である緩歩動物(かんぽどうぶつ。昆虫ではない)、通称「クマムシ」は、すでに地球上に存在しているからだ。
クマムシ(英語ではwater bearやmoss piglet)は、体長が0.3~0.5mmと実に小さい。ところが、信じられないほどの生存能力の持ち主で、自然における究極のサバイバーだ。
クマムシは、ほとんどの生命体が死に絶えてしまうような環境でも成長し、世界で最も深い海溝であろうが、世界有数の高さを誇る山頂であろうが、凍った南極大陸であろうが、生き延びることができる。それが可能なのは、何百万年にもわたる進化の果てに身に着けた、並外れた適応力のおかげだ。放射線や極端な高温や低温、圧縮圧への耐性を持つばかりか、仮死状態で生きながらえる。
では、クマムシについて判明している驚きの事実をいくつか紹介しよう。
1. 極限の放射線にも耐え得る最強生物
放射線が人間に及ぼす影響は十分に立証されており、DNAを傷つけ、致命的な損傷を与え得ることがわかっている。ところが、2016年9月に『Nature Communications』で発表された研究によると、クマムシは、地球に存在するほかのほぼすべての生命体にとって致命的となるレベルの放射線を浴びても耐えられるという。
この研究によれば、クマムシは5000グレイの放射線を浴びても生き延び、状況によっては6200グレイでも耐えられる。ちなみに、人間は10グレイの放射線を浴びただけで死に至る。
研究で明らかになったところによると、クマムシは、Dsup(Damage suppressor proteins:損傷を抑制するタンパク質)という特有のたんぱく質を持っており、これが、クマムシのDNAを放射線による損傷から守っている。目に見えない盾のように働き、放射線のエネルギーを吸収して、遺伝子情報に有害な変異が生じないよう保護しているのだ。



