経済・社会

2025.10.21 14:30

中間層崩壊の先で台頭する「カウンターエリート」の論理と正体

石田 健|「The HEADLINE」編集長

石田 健|「The HEADLINE」編集長

米トランプ大統領をはじめとする、過激な主張で衆目を集める「カウンターエリート」たち。 世界、そして日本での破壊者たちの台頭は、何を意味し、何をもたらすのか。

advertisement

24年、世界的な「選挙イヤー」には既存の価値を否定し、政府や官僚、マスコミといった「エリート」を批判する新たな政治的リーダーが多く登場した。しかし、それをエリートではない人々の不平不満や嫉妬、羨望ととらえるのではなく、社会文化構造の大きな変化と理解すべき、と主張するのが、インターネットのニュース解説メディア「The HEADLINE」編集長で『カウンターエリート』(文春新書)著者の石田健だ。その背景と時代性について、石田に話を聞いた。

──「カウンターエリート」、そしてその台頭の背景は?

24年に米トランプ大統領が再選した大統領選では、ポッドキャストやYouTubeが主戦場となった。コメディアンで総合格闘技の解説者を務めていたジョー・ローガンが主宰するポッドキャストへのドナルド・トランプ、J・D・ヴァンス、イーロン・マスクらトランプ陣営の出演回の再生回数は計1億回に達した。シリコンバレーの思想的グルであるピーター・ティールやマーク・アンドリーセンも支援に回った。J・D・ヴァンスやピーター・ティールへ影響を与えた起業家兼ブロガーのカーティス・ヤーヴィンをはじめ、彼らに代表される「カウンターエリート」は、政治的、文化的に極端なことを主張し、既存の秩序を批判し、エリートを攻撃したりなどの要素が注目されがちだが、従来続いてきた「リベラルな秩序」にNOを突きつける、リベラリズムへの「反逆者」と考えてもらえるとよいと思う。

advertisement

ここ10年でカウンターエリートが台頭した背景は、3つある。ひとつは格差が拡大し、経済成長が続き、国がこれからも発展し、いい学校に入っていい会社に勤めれば将来安定した生活が待っている、というような従来の「リベラルな秩序」に対する疑念が中間層において高まっているということ。ふたつ目は、そういった疑念の声は、いわゆる伝統的なメディアのTVや新聞で取り上げられることはなかったが、YouTubeなどソーシャルメディアがマスメディア化し、拡散することになった。3つ目は、そのメディアが、2、3分から10分の編集されたコメントではなく、「2時間自由にしゃべってください」など、いわゆる「ストーリーテラー」たちの独壇場になったことだろう。

アメリカはこうしたメディア構造の転換が早かったため先行するが、この傾向は世界で見られ、日本も例外ではない。イーロン・マスクが米政権を離れたことで著書の内容がやや古くなるかと思ったが、25年夏の参院選で参政党が躍進したことなどから、既存エリートへの不満が高いことが可視化されていると思う。

特に先進国でこの傾向が強いのは、やはり中間層が崩壊しているからだ。皆で豊かになる、経済成長を追い求める、ということだけが国の共通言語として、共同幻想として信じられてきたが、グローバルサウスなどの中間層が少ない国は例外として、G7(主要7カ国)ではもはや通じなくなっており、どうしても同じような現象が起こる。

次ページ > 世界、そして日本の行方

文=岩坪文子

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事