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2025.10.08 16:00

GXは「協働」を生む新時代のドライバーだ 『Forbes JAPAN NEXT GX STREAM Forum 2025』レポート

8月28日、虎ノ門ヒルズ「TOKYO NODE」で『Forbes JAPAN NEXT GX STREAM Forum 2025 Supported by ASUENE』が開催された。グリーン・トランスフォーメーション(GX)をテーマに、日本を代表する起業家、投資家、そして政府関係者が一堂に会し、日本が世界をリードするための戦略を議論する本フォーラム。その冒頭、主催者として登壇したForbes JAPAN編集長の藤吉雅春は、このイベントを企画した発端となる一つの出会いを明かした。


Forbes JAPAN編集長の藤吉雅春
Forbes JAPAN編集長の藤吉雅春

「少し前、経済産業大臣と会食する機会がありました。その中で、アジアの『AZEC(Asia Zero Emission Community:アジア・ゼロエミッション共同体)』の話になったとき、場の空気が一転して盛り上がったのです。大臣が語るには、会合後、多くの国から直接、日本への期待が寄せられていると。その話を聞いた瞬間、なんだか時代の扉が開くような気がしました。世界の歴史が協調と分裂を繰り返す中で、この環境や気候変動の問題を機に実は“協調する時代”が来るのではないか、と 」

藤吉が語る「協調」とは、単に歩調を合わせることではない。気候変動という地球規模の課題に対し、各国が共に行動し、具体的な成果を生み出していく「協働」を意味している。地政学的な分裂の時代を終わらせ、新たな協働関係を築くドライバーとなり得るこの機会に、日本がイニシアチブを取ってほしいという期待がアジア各国から寄せられている。この大きな時代のうねりを感じていた矢先、藤吉はアスエネ代表取締役CEOの西和田浩平と出会う。西和田が語った「GXを見える化できる」という言葉に、藤吉はムーブメントが一気に広がる確信を得て、本イベント開催へと至った。

続いて共催挨拶に立った西和田は、グローバルで勝つために不可欠なマインドセットを力強く語った。また、元サッカー日本代表の本田圭佑氏との会食の際の会話を明かした。

アスエネ代表取締役CEOの西和田浩平
アスエネ代表取締役CEOの西和田浩平

「本田さんから『ソフトバンクの孫さんは何が一番すごいのかというと、あの人はとても視座が高い』という話を聞きました。高い目標を設定しているため、それを逆算して、そこにたどり着くために何をすべきかを考える。だから圧倒的に考えている発想が変わってくる、と。本田さん自身も、高校生の時からワールドカップ優勝を目標にしていたからこそ、逆算の発想でセリエAの10番といった偉業を成し遂げられた。これにならって、我々ももっと視座を上げなければならない」(西和田)

マクロな視点で見れば、世界はGXを軸とした「協調の時代」へと向かっている。その中で日本企業が勝ち抜くために求められるのは、個々の経営者が持つべき「圧倒的な視座の高さ」だ。本フォーラムは、この両輪から日本のGXの未来を紐解くものとなった。

経済合理性とM&Aが拓く、グローバル展開の絶好機

Terra Charge代表取締役社長・徳重徹(左)、アスエネ代表取締役CEO・西和田浩平(右)
Terra Charge代表取締役社長・徳重徹(左)、アスエネ代表取締役CEO・西和田浩平(右)

セッション1『GX Global Challenge -日本発で世界を切り拓く、グローバルインパクト創出-』には、アスエネ代表取締役CEOの西和田浩平とTerra Charge代表取締役社長の徳重徹が登壇。世界を飛び回る2人の起業家が肌で感じるグローバル市場のリアルを語ったが、その内容は今年8月に行われた両氏の対談(https://forbesjapan.com/articles/detail/81160)をさらに深化させるものだった。

まず、アジア市場におけるEVの爆発的な普及について、徳重は環境意識だけでなく、純粋な「経済合理性」が市場を力強く牽引している現実を指摘する。

「タイはこれまで日本車が高いシェアを維持してきました。新車のEV比率が高く、2年前は0.1%だったのが直近1ヶ月では10%を超えている。また、インドでUberに乗ると、みんな同じ型のEVでやって来ます。なぜかというと、補助金や圧倒的なランニングコストの安さから消費者がEVを選んでいるからです。走れば走るほどお金が浮く、という極めてシンプルな理由が市場を動かしているのです」(徳重)

一方、政治リスクなどで揺れる米国市場については、両氏とも「今こそ絶好の機会だ」と口を揃える。特に現地のGX企業の優れた技術や人材と連帯する好機だというのだ。

「自社単独での米国展開(オーガニック成長)は困難な局面ですが、M&Aという切り口であれば、むしろ絶好の機会といえます。前は企業価値評価が極めて高額でなければ交渉できなかった米国の脱炭素関連企業が、現在は状況が大幅に変化している」(西和田)

徳重も「我々のベンチマークしていた会社が株価20分の1になったりと、リーマンショックの時の金融機関みたいなことになっている。逆にそういう状況じゃないと、米国で勝つって非常に厳しい」と、この見方に強く同調する。

事実、アスエネは今年5月、AIを活用したエネルギーマネジメントシステムを手がける米企業「NZero」をM&Aした。具体的なシナジーを提示し、創業経営者同士の信頼関係を築くことで、通常半年はかかるとされるディールを2ヶ月強でクローズさせた。彼らにとってグローバル市場はもはや挑戦の場ではなく、明確な勝機のある主戦場なのだ。

「素材技術」「データ基盤」「AIエネマネ」という日本の競争優位性

では、グローバル市場で勝ち抜くために、日本はどのような競争優位性を持っているのか。セッション2『The Future of GX -新たな市場価値を創出するためのGXの活用-』では、アスエネの小原大智、GLIN Impact Capitalの秦雅弘、つばめBHBの中村公治、JERA Crossの大杉慎平、そしてForbes JAPAN Web編集長の谷本有香が登壇し、日本の具体的な勝算が議論された。浮かび上がってきたのは、日本が誇る3つの強みだ。

左から、JERA Cross 大杉慎平、つばめBHB 中村公治、JERA Cross 大杉慎平、GLIN Impact Capitalの秦雅弘、アスエネ 小原大智
左から、JERA Cross 大杉慎平、つばめBHB 中村公治、GLIN Impact Capitalの秦雅弘、アスエネ 小原大智

一つ目は、世界トップレベルの「素材技術」である。オンサイトでのアンモニア製造を可能にする独自の触媒技術を開発する、つばめBHBの中村はこう語る。

「海外のアンモニアプラントは巨大ですが、それは我々が持つような優れた触媒技術がないから大規模にせざるを得ないのです。日本には触媒や無機膜など、世界に誇る素材技術が数多く眠っている。ただ、課題はそれをどうビジネスとしてスケールさせていくかです」(中村)

このスケールという課題に対し、投資家の立場からGLIN Impact Capitalの秦が応える。

「こうしたディープテックは花開くまで時間がかかる。だからこそ我々のようなインパクト投資家が短期的なリターンを求めるのではなく、腰を据えて支える必要がある。日本の素材技術は間違いなく世界を変えるポテンシャルを秘めています」(秦)

二つ目は、世界に類を見ない「電力データ基盤」だ。JERA Crossの大杉は、日本のスマートメーター普及率が世界一であるという事実に大きな可能性を見出している。

「スマートメーターの普及率がほぼ100%で、30分ごとの電力データが誰でも取れる。実は電力データがこれほど民主化されている国は、世界にほかにありません。これはAIを活用したエネルギーマネジメントや、新たなサービスを創出する上でとてつもないアドバンテージです。このデータ基盤があるからこそ、日本は他国に先駆けて高度なエネルギー最適化を実現できるポテンシャルがある」(大杉)

そして三つ目が、この強固なデータ基盤の上に成り立つ「AIを活用したエネルギーマネジメント技術」だ。この領域をリードするのが、まさにアスエネにグループジョインしたNZeroに他ならない。同社のプラットフォームは、電力データ基盤を最大限に活用し、企業のCO2排出量やエネルギーコストをAIで分析・可視化する。個別の技術や膨大なデータを企業が具体的な削減施策へと繋げるための“翻訳者”ともいえる役割を果たすことで、GXの社会実装を加速させているのだ。

世界トップの「素材技術」を、「電力データ基盤」の上で、「AIエネマネ」技術が最適に制御する——。そして、その挑戦を長期的な視点を持つ投資家が支える。本セッションを通じて、個別の技術力だけでなく、それらを統合し、価値を創造するエコシステムこそが日本の競争優位性の本質であることが見出された。

官民連携で描く、日本の新たな循環経済

最終セッション『GX Co-Creation -GXを加速する、持続可能な未来に向けた協創ビジョン-』では、JEPLAN会長の岩元美智彦、経済産業省の潮高史、ESG・責任投資専門家の森澤充世、モデレーターとしてForbes JAPAN編集長の藤吉雅春が登壇。日本が描くべき壮大な未来像が提示された。

口火を切ったJEPLANの岩元は、資源を持たない日本が発想の転換によって資源大国へと生まれ変わる、極めて戦略的なビジョンを語る。

左から、JEPLAN会長 岩元美智彦、ESG・責任投資専門家 森澤充世、経済産業省 潮高史。
左から、JEPLAN会長 岩元美智彦、ESG・責任投資専門家 森澤充世、経済産業省 潮高史。

「日本には地下資源はないが、“地上資源”はある」と岩元は言う。JEPLANは国内に蓄積された廃棄物を資源とみなし、例えばペットボトルや衣類などを分子レベルまで分解し、色などの不純物を取り除いて再び新品同様の原料へと再生させる独自のケミカルリサイクル技術で資源を永続的に循環させる。その先に見据えるのは、リサイクル技術を前提に「ものづくりの定義」そのものを日本が主導することで、世界の産業構造における新たな標準を握るという壮大な構想だ。

この民間のビジョンを政府はどう後押しするのか。経済産業省の潮は、政府の役割を「予見性の確保」だと明言する。

「GXのような息の長い取り組みには、莫大な投資が必要です。民間企業が安心してその投資に踏み切れるよう、我々は規制と支援を一体で進めることで、長期的な予見性を確保することに全力を尽くします。これが政府の最も重要な役割です」(潮)

この言葉を受け、森澤は投資家の立場から政策が市場に与えるインパクトの重要性を具体的に解説する。

「政策がどのように明確に出されてくるかによって、機関投資家だけでなく、個人投資家も動きます。例えば『新NISA』も政策によって個人の資産配分(アセットアロケーション)が大きく変わった一例です。潮さんがおっしゃったような予見性が確保されれば、それを拠り所に我々投資家はリスクを判断し、初めて資金を動かすことができる。民間の壮大なビジョンと、それを支える政府の明確な方針。この両輪が揃って初めて、GXという巨大な市場が本格的に立ち上がるのです」(森澤)

技術とビジョンを持つ民間、投資環境を整備する行政、そしてその可能性に資金を投じる投資家。この官民金の強力な連携こそが、日本を新たな循環経済のリーダーへと押し上げる原動力となるに違いない。

GX成功の鍵は「共創」にある

「視座の高さ」から始まった本フォーラムは、グローバルな勝機や日本の競争優位性、そして官民連携の未来像まで、多岐にわたる議論が交わされた。全登壇者に共通していたのは、GXはあまりにも巨大な課題であり、企業の枠を超えた「協働・共創」なくして実現は不可能、という感覚だろう。スタートアップ、大企業、投資家、行政といったプレイヤーがそれぞれの強みを持ち寄り、業界の垣根を越えて連携するエコシステムなくして、この挑戦は成し遂げられない。

本イベントは、未来を動かすGX戦略を語るだけでなく、その実現に不可欠なエコシステム形成の第一歩を記す重要なマイルストーンとなったはずだ。

アスエネ
https://corp.asuene.com/

Promoted by アスエネ / text by Michi Sugawara / photographs by Shuji Goto / edited by Mao Takeda