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2025.10.02 11:00

米国の年金だけで快適に暮らせる「イタリアの7地域」──月約15万円からとの新報告

アブルッツオ州(Shutterstock)

アブルッツオ州(Shutterstock)

老後の移住先を探しているなら、イタリアを検討してみる価値がある。International Living(インターナショナル・リビング)の新しい報告書は、驚くほど手頃な価格で暮らせるイタリアの7地域を取り上げている。実際、単身者なら月1000ドル(約14万9000円)、夫婦なら月1500ドル(約22万3000円)という低い平均生活費で、イタリア国内の多くの場所で「快適に」暮らせるという。

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この違いは米国と比べると際立つ。Federal Reserve Bank of St. Louis(セントルイス連邦準備銀行/データ出所は Bureau of Labor Statistics〈米国労働統計局〉)によれば、米国内の65歳以上の世帯の平均月間支出は約4345ドル(約64万5800円)に達する。一方、平均的な年金給付は月約2000ドル(約29万7000円)で、大多数の退職者にとっての主な収入源であるにもかかわらず、多くの米国都市では住宅、食費、医療費を賄うのがやっとだ。

そのギャップこそが、イタリアを退職者にとって魅力的な選択肢にしている理由だ。International Livingのエグゼクティブ・エディターであるジェニファー・スティーブンスは取材に対し、「イタリアは夢の目的地という評判があります。その通りですが、同時にとても現実的なリタイア先でもあるのです」と語った。「日々の支出は、米国で多くの人が払っている水準よりもずっと低く抑えられます」。

スティーブンスによれば、節約効果は大きいが、何かを犠牲にする必要はないという。「それは『ぎりぎりでやり繰りする』ということではありません。よく食べ、文化イベントを楽しみ、近場を旅行し、コミュニティの一員として暮らせます」と彼女はいう。

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退職者向けに特別に設計されたビザ、医療制度も強み

世界の多くの地域で居住ビザの取得が懸念となる一方で、イタリアには退職者向けに特別に設計された Elective Residency Visa(エレクティブ・レジデンシー・ビザ)があり、手続きがしやすい点も魅力だ。International Livingでグローバル分散投資を統括するテッド・バウマンは取材に対し、「これはイタリアで長期的に暮らすための鍵です」と語った。「安定したパッシブ収入を示す必要があり、単身者で年間約3万1000ユーロ(約540万円)、夫婦はそれ以上です」。

このビザは有効期間1年で、更新が可能だ。「5年後には永住権を申請でき、10年後には市民権も申請できます」とバウマンは言う。

イタリアの医療制度も強みである。International Livingのイタリア通信員であるチップ・スタイツは取材に対し、「同国の国民保健サービスは世界でも最高水準に位置づけられており、居住者は非常に低コストで利用できます」と述べた。「移住者は、病院やクリニックがどれほど近代的で効率的かについて、よく話題にします」。

伝統を受け継いだ文化、美しい景観、年金収入でも手が届く生活費

スティーブンスは、International Livingが今回の7地域を選んだ理由について、伝統を受け継いだ文化、美しい景観、そして年金収入でも手が届く生活費というバランスが取れているからだと説明する。「それぞれが独自のライフスタイルを提供します——トスカーナのなだらかな丘陵地帯、シチリアの海辺の魅力、マルケやアブルッツォの静かな町です」とスティーブンスは言う。「心地よいアパートを借り、屋外市場で買い物をし、祭りや地域の行事を楽しめます。しかも、退職後の予算を圧迫しません」。

最終的に、スティーブンスはこう語る。イタリアはロマンと実用の両方を提供する。「イタリアの夢は、景色だけではありません。生活のリズムも挙げられます。朝は広場でコーヒーを飲み、市場で新鮮な食材を買い、夕方は友人とワインを飲みながらゆっくり過ごします」とスティーブンス。「退職者は、それが達成可能であるだけでなく、多くの場合、米国にとどまるより費用がかからないことに気づきます」。

スタイツも同意する。「コスト削減は重要です。しかし、イタリアを本当に際立たせているのは生活の質です」と彼は言う。「何かを諦める必要はありません——実際には得るもののほうが多いのです。それがイタリアという大きな贈り物です」。

以下に、新報告で挙げられた7地域を紹介しよう。

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翻訳=酒匂寛

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