北米

2025.10.01 09:00

「人間への関税」トランプによるH-1Bビザ申請料1500万円、米国外の新興企業には好機

Andrew Harnik/Getty Images

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米国のテクノロジー企業にとって、外国人労働者の雇用コストが一段と高くなった。その一方で、米国外のAIスタートアップにとっては新たな採用機会が広がっている。

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米国時間9月19日、ドナルド・トランプ大統領は人気のH-1Bビザに関する爆弾発言をした。米国のテック企業が外国から人材を採用するために使われてきたこのビザに、申請料10万ドル(約1480万円)を課すというものだ。この突然の大統領令は混乱と不安を引き起こし、マイクロソフトやメタのような大手企業は海外出張中の社員に24時間以内に帰国するよう指示した。米国内の企業がまた新たな予期せぬコスト増を嘆く一方で、欧州のテクノロジー企業は「代わりに我々のところで働こう」とメッセージを発している。

厳格な移民政策や拘束・強制送還の脅威によって、すでに米国は優秀な外国人材にとって魅力が薄れていた。今回の新たな手数料は、これまで多くの若い人材を米国企業に奪われていた、ロンドンやパリを拠点とするスタートアップにとって追い風となるだろう。シリコンバレーや高給の魅力は強力だが、この制度変更はアルファベットやメタのような超大企業には大した影響を与えない。10万ドルは彼らにとってわずかな負担に過ぎないからだ。しかし、資金力に限りのあるスタートアップにとっては、欧州企業に優位を譲ることになる。

「欧州の多くの人にとって、これは祝福のようなものだ」と語るのは、ロンドンを拠点に生成AI動画モデルを開発するシンセシアのCEO、ビクター・リパルベリだ。「最終的に米国にとってマイナスになると思う。欧州は特に副社長やディレクターといった上級管理職の分野で、熟練労働者を常に必要としている」と彼は付け加えた。

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AI人材を巡る争奪戦はここ数カ月で激化している。メタのマーク・ザッカーバーグCEOは新しいAIスーパーインテリジェンスチームで働く研究者やエンジニアを確保するために数十億ドルを投じ、候補者1人1人に破格の給与を提示した。一方で、トランプ大統領は移民政策を政権の柱とし、H-1Bビザ制度を標的にすることで、米国企業に国内人材の採用を促そうとしている。

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翻訳=江津拓哉

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