「帰途につく」の意味とは?語感・成り立ち・使われ方
基本の意味と読み
「帰途につく(きとにつく)」は、出先から自宅・会社・出発地へ戻るための道のりに入り始めることを表します。単なる「帰る」よりも、帰路へと歩み出す動的な場面を切り取る表現です。
語の成り立ちとフォーマル度
「帰途」は「帰り道・帰路」、「〜につく」は「〜を開始する・〜に就く」の意です。全体として落ち着いた文章語で、挨拶・報告・広報文にもなじむフォーマル寄りの言い回しです。
似た表現との境界
- 帰る:日常的・口語的で到着までを広く含む。
- 帰宅する:到着点が自宅に限定。
- 帰社する:到着点が会社に限定(社内向けに適合)。
- 帰路につく/帰路に就く:意味は同じ。漢字では「就く」を用いるのが一般的。
ビジネスシーンでの正しい使い方とは?
社外向けの丁寧な報告・連絡に
打合せ・視察・イベント終了後の連絡で「これより帰途につきます」は、行動開始と予定の締めを簡潔に伝えます。到着目安や連絡手段を添えると、配慮のある文面になります。
社内連絡・行動ログでの活用
日報・チャット・グループメール等でも有効です。移動開始を明確化することで、次の可用時間や応答可否をチームに共有できます。
来賓・参加者へのアナウンス
催事の終幕や見送り時のスピーチにも使えます。「皆さまが安全に帰途につかれますように」といった配慮語と相性が良い表現です。
注意すべきポイント
- タイミング:移動を開始した/開始する直前に用いる。到着後には使わない。
- 宛先に応じた言い換え:社外には「帰途につく」、社内には「帰社します」の方が目的地が伝わる。
- 目安の明示:「○時頃に到着予定」「移動中はメール対応のみ可」など期待値を合わせる。
- 表記ゆれ:「帰途に就く」「帰路に就く」と書く場合は「就く」を用いるのが無難。かな書き「帰途につく」も広く用いられる。
具体例でつかむ「帰途につく」
社外メールの例
- 本日の打合せは以上で終了いたしました。こちらより帰途につきます。到着は18時頃を予定しております。
- 現地確認を終え、15時目処で帰途につきます。移動中はメールでご連絡ください。
社内チャットの例
- 最終訪問先の面談が完了。これから帰途につき、社に19:30頃戻ります。
- 展示会対応終了。片付け後に帰途につきます。緊急は携帯まで。
式典・イベントの挨拶例
- 本日はご参加ありがとうございました。どうぞお気をつけて帰途につかれますようお願い申し上げます。
「帰途につく」をより効果的にする言い換え・補足
目的地・状況を明確にする言い換え
- 帰社いたします:社内共有に適切。
- ○○駅へ向けて出発します:合流・乗継の共有に。
- 撤収に移り、帰途につきます:イベント現場の片付け同時進行を示す。
印象を整える補足語
- 安全配慮:天候・交通への言及(例:悪天候のため到着が前後する可能性があります)。
- 可用性:移動中の対応範囲(電話不可/チャット可 等)。
- 次アクション:到着後の対応予定(到着次第、議事録を送付します)。
混同しやすい表現との違い
「帰途につく」vs「帰路につく」
意味は同じ。どちらも正用だが、社外文面はかな書き「帰途につく」も読みやすい。漢字で統一するなら「就く」を用いる(×付く)。
「帰途につく」vs「辞去する」
「辞去する」は主に相手先から礼を尽くして退出する意。「帰途につく」は移動開始の叙述で、礼儀表現ではない。挨拶では「本日はこれにて失礼いたします」を併用するとよい。
「帰途につく」vs「撤収する」
「撤収」は機材・人員の片付けや現場解散の手順を指す。撤収の後に帰途につく、という順が自然。
英語で表すときの定番フレーズ
丁寧表現
- We will set out on our return shortly.
- I’m about to begin the journey back to the office.
カジュアル/ビジネス会話
- I’ll head back now. / I’m heading back to the office.
- We’re on our way home after the meeting.
使いこなしのコツ(ビジネス文作法)
PREPを意識した流れ
「出発(Point)→ 理由・状況(Reason)→ 到着目安・連絡手段(Example/具体)→ 再確認(Point)」の順で書くと、短くても相手が動きやすい文面になります。
テンプレート(社外メール)
本日の<用件>は以上で終了いたしました。これより帰途につきます(Reason:◯◯線にて移動)。到着は◯時頃の見込みです(Example:移動中はメールのみ対応可)。着き次第、議事録を送付いたします(Point)。
よくある疑問とNG
Q. 到着後に「帰途につきました」はOK?
NG。「帰途につく」は開始時の表現。到着後は「帰社しました/帰宅しました/戻りました」を用いる。
Q. 目上に使っても失礼では?
表現自体は丁寧。ただし、相手への気遣い語(道中お気をつけて 等)や到着目安を添えるとより良い。
Q. 固すぎる印象にならない?
社内カジュアル文脈では「戻ります」「帰社します」へ言い換える。文脈に合わせてレベル調整を。
用例まとめ(場面別・一括コピペ可)
営業訪問後
- 打合せは滞りなく終了いたしました。これより帰途につき、到着次第要点を共有いたします。
視察・出張
- 最終工程の確認を完了しました。15:30発で帰途につきます。移動中はメールで対応いたします。
イベント主催側
- ご来場ありがとうございました。皆さまどうぞお気をつけて帰途につかれますようお願い申し上げます。
類義語・言い換え表現の一覧
日本語の類義語
- 帰路につく/帰路に就く
- 帰社する/社へ戻る
- 帰宅する/自宅へ戻る
- 帰還する(やや硬い・公式)
- 撤収に移る(片付け工程の開始)
ビジネスでの実用的言い換え
- これより移動を開始します
- ◯◯へ向けて出発します
- 本日中に戻ります/明朝に帰社します
まとめ
「帰途につく」は、出先から帰り道に入り始める瞬間を端的に表す、上品でビジネス適性の高い表現です。社外には丁寧さ、社内には可視化(到着目安・可用性)の観点から活用し、状況に応じて「帰社する」「戻る」などへ言い換えれば、読み手にとって分かりやすく、行動につながる連絡になります。
使う場面・タイミング・補足情報の三点を押さえ、適切な類義語と使い分けることで、コミュニケーションの品質と信頼感を高められるでしょう。



