だからこそ、20代の間は周りから何を言われようと気にせず、面白いものを選ぶっていう選択を意識的にやったほうがいいと思います。最先端のものを知っている人よりも、自分の好きなものがはっきりしていて、こだわりが強い人の方が魅力的だなというのは、若い人にもわかると思います。AIに聞けばすぐわかることが答えられる人間になってもしょうがないじゃないですか。
自分の欲を形にする「好きなものミュージアム」
それと、私はよく「自分の欲をなめるな」と伝えているんですが、20代30代でごまかした欲はあとで必ず自分に返ってくる。たとえば、結婚や出産を機に「もっと働きたかったけど、こっちの方が好まれると思って」と仕事を辞めたとして。その後再び働こうとしたときに仕事探しに苦労したら、きっと「働きたい」という自分の欲をみくびっていたな、って後悔すると思うんです。
大事なのは、自分の選択にどれだけ自覚的でいられるか。「自分は何のどこに一番欲深いのか」を20代のうちに知っておくことが、後の人生の軸になるのだと思います。
だからこそ「好きなものをちゃんと並べる」ことが大切。人生の中で、自分だけの博物館や美術館を作るみたいに、好きなものを並べていく。絵でも音楽でもドラマでもなんでもいい。集めていけば必ずそこに通底するものが見えてくる。それが、「自分の欲」の姿なんだと思います。
私の場合ヒップホップが好きという根底には、「異形の者たちが価値観をひっくり返す」という理念がある。だからパンク好きの彼とつきあってたときは、結果的にそこが合わなかったんだと思います(笑)。同じ反体制でも、パンクはダメをダメのまま受容する力があるカルチャーだって私は理解してましたけど、ヒップホップはダメと決めつけてくるメジャーな価値観ごとひっくり返して新しい価値観でドミナントするパワーがあるから、元彼からすると私がすごく欲深く見えていたみたいです。
私の心の博物館に飾られているプロレスも同じです。メジャープロレスも見ますけど、基本的にはやっぱりインディープロレスが好き。メジャーは数(観客数)とお金(興行収入)が直結してくるので、数から逆算して大衆向けに作るという役割があると思うんですが、インディーは計算して作らず、リスクは自分たちで背負う。その自由さに惹かれるんですよね。そういう意味ではヒップホップと共通しています。
「体がでかく生まれた」っていうのが私の全ての価値観の発端ですが、こうした自分の「地図」みたいなものをちゃんと把握するのに私は時間がかかりました。 “コンプレックスの裏返し”で憧れで欲しがっているものと、本当に自分が欲しいものって全く別だと思うので、若い頃からそこを混合しないようにしていった方がいいと思います。


