欧州

2025.09.26 09:30

AIで地雷を探知し、地上ロボットで除去 「戦後」も見据えたウクライナの取り組み

ドローン(無人機)からの映像をAI(人工知能)で解析し、地雷原をマッピングするデンマーク・ウクライナ系スタートアップ、Dropla Techのシステム。ウクライナ政府の防衛技術育成プラットフォーム「BRAVE1」がX(旧ツイッター)で共有した動画から

ドローン(無人機)からの映像をAI(人工知能)で解析し、地雷原をマッピングするデンマーク・ウクライナ系スタートアップ、Dropla Techのシステム。ウクライナ政府の防衛技術育成プラットフォーム「BRAVE1」がX(旧ツイッター)で共有した動画から

ドニプロ川の岸辺にある旧ソ連時代の古い工場の中に、戦争の過去と現在が併存している。錆びついた前世紀の産業機械の隣に、地雷を探知するように訓練されたスマートな地上ロボットが置かれているのだ。

ウクライナは現在、世界で最も地雷に汚染された国となっている。国連によると、ウクライナの国土の23%が地雷や不発弾によって汚染されている可能性がある。

地雷や不発弾の除去は、非常に手間がかかり危険な作業だ。世界銀行は、ウクライナでの取り組みも長い時間を要し、費用は370億ドル(約5兆5000億円)以上にのぼると見積もっている。スロバキアのシンクタンク、グロブセック(GLOBSEC)の試算では、従来の手段を用いた場合、ウクライナ国内の地雷を完全に除去するには757年かかるという。

9月には、ウクライナ北部チェルニヒウ州で、地雷除去にあたっていたデンマークの人道NPO、デンマーク難民評議会(DRC)のチームがロシア軍の弾道ミサイルで攻撃され、作業員2人が死亡、3人が負傷した。ウクライナではこれまでに複数の人道的な地雷除去チームがロシアによる直接の攻撃目標にされており、この活動はいっそう危険なものになっている。

地雷との闘い

ウクライナ軍による2023年の反転攻勢で、最大の障害になったのも地雷原だった。ロシア軍は長大な防御線を築いていたため、ウクライナ軍の工兵部隊は夕暮れ時に腹這いで進み、敵のドローン(無人機)による監視や砲撃のなかで地雷を見つけ出し、処理しなくてはならなかった。

ウクライナの外国人部隊(インターナショナル・リージョン)の衛生兵、リマ・ズライティスは「地雷は兵士が前進を図る際にいつも問題になります。ロシア側はいたるところに地雷を撒いているからです」と語る。「(小型地雷の)『バタフライ地雷(花びら地雷)』や『トウポッパー』は大きな問題になっていて、足の一部もしくは全体が吹き飛ばされます。そうした例を治療した経験が何度かあります。もちろん、もっと大型の地雷は重傷を引き起こし、たいていの場合、死に至ります」

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翻訳・編集=江戸伸禎

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