米グーグルのハードウェアデザイン責任者、アイビー・ロス氏が来日した。
PixelシリーズやNestシリーズをはじめ、世界中の人々の生活に浸透するプロダクトに関わってきたロス氏は、単なるデザインリーダーではない。心理学やアートのバックグラウンドを持ち、テクノロジーと人間性を橋渡しする視点から組織を導いてきた。誕生から10周年を迎えたPixelの歩みとともに、ロス氏が語ったクリエーションとリーダーシップの本質に迫る。
オーケストラの指揮者のようにデザインチームを率いる
ロス氏はグーグルのコンシューマー向けデバイスのハードウェアデザイン責任者であり、関わる職務はプロダクトにパッケージのデザイン、色彩や素材の選定、必要に応じてCADデザインに至るまで多岐に渡る。「ひとつのプロダクトをデザインするためには、実に多様な役割が必要なのです」とロス氏は語る。
Metalsmith(金属細工師)として自身のキャリアを歩き始めたロス氏は、その後ジュエリーデザイナーとしても輝かしい成功を収める。彼女が手がけた革新的な金属製ジュエリーは、全米芸術基金(National Endowment for the Arts)の助成金を受賞した。作品の一部は現在、世界12の美術館に所蔵されている。
その後、ロス氏はファッションや玩具など、多様な業界でプロダクトデザインに携わってきた。一見すると畑違いに見えるデジタルデバイスのデザインも、彼女にとっては地続きの営みだ。「私は、優れたデザイナーであればデザインのプロセスを異なる分野のあらゆるものに応用できると感じています」と、ロス氏は語り笑みを浮かべる。大切なのはデザインするものが異なっていても、そこに作り手の精神、つまりは「マインド」をそれぞれの対象に反映させることなのだ。
ロス氏は、グーグルにおける自身の役割をよく「オーケストラの指揮者」に例えている。「楽器(デザイナー)を深く理解したうえで、演奏する曲(ビジョン)を決めます。指揮者としての私の仕事は、『トロンボーンはもう少し前に』『ここのティンパニは情熱的に』といった具合にタクトを振ることです」。同じチームの才能あるデザイナーたちの能力を最大限に引き出しながら、調和の取れたプロダクトをまとめあげる。それがハードウェアデザインの最高責任者である、ロス氏に求められる役割の本質だ。
「カメラ」を中心に進化してきたPixelスマホのデザイン
Google Pixelは、誕生から10年の間にデザインの面からも大きく進化した。変遷の中心にあったのは、ユーザーが最も価値を感じる機能、すなわち「カメラ」だったとロス氏は振り返る。



