プロダクトデザインの本質は「課題を解決」すること
スマートフォンは、カメラやAIなど最先端のテクノロジーを詰め込んだデバイスだ。ともすれば、これらの機能を活かそうとすれば、デザインの制約が生まれることもある。しかし、ロス氏の見方は違った。
「私たちは、機能性という課題をむしろ歓迎します。特定の制約を与えられるからこそ、その中でよりクリエイティブになれるからです」
ロス氏は、プロダクトデザインとアートは明確に異なると言い切る。
「アーティストは自分の魂の一部を作品に込めようとします。一方、プロダクトデザイナーは何百万人、何十万人もの人々の『課題を解決すること』にも立ち向かいます。そのことに手間を惜しまず、むしろ好んで創造的に解決できる人物が、優秀なプロダクトデザイナーであると考えます」
生成AIのような革新的な技術は、デザイナーにとっても新たな挑戦であり、おもしろでもあるとロス氏は語りながら目を輝かせる。AIは「進化」というより、むしろ「革命」になるかもしれないと、ロス氏は期待を込めて語った。物理的なハードウェアがどうAIに適応すべきか、ユーザーがどうすればシンプルにアクセスできるかなど、現在グーグルのデザインチームは数年先の未来を見据えながら次世代のプロダクトに向き合っている。
シリーズ化されたプロダクトは、新製品が発表されるとすぐに前のモデルとデザインの斬新さを比較されがちだ。ロス氏のチームは「変化のための変化には意味がない」というスタンスから、新しい技術や機能が要求することに従って、2〜3年ごとに自然に新しいデザインを生み出してきた。スマートフォンの本体側面、メタルパーツに施されたダイヤモンドカットのように細部のデザインを洗練させることの積み重ねも少なくない。
スマートフォンには今後、生成AIを活用する機能がますます取り込まれていくだろう。ロス氏は「生成AIの進化は極めて速く、毎年のようにプロダクトのデザインが大きく変わることもあり得ます。しかし、私たちの使命は変わりません。常にユーザーの視点に立ち、機能が突きつける課題に誠実に取り組むことです」と静かな口調で答えた。


