「コンシューマーがGoogle Pixelスマートフォンとのつながりを強く感じており、その中でカメラが最も高く評価される部分であったことは明らかです。だからこそ、搭載されるカメラの数、機能が進化するスピードに合わせて、デザインも飛躍する必要がありました」
初期のPixelスマートフォンは、背面に少し飛び出た四角いカメラユニットを搭載していた。しかし、カメラに関連する技術が成熟して、ユニットの数やサイズが変わると、プロダクトデザインの側で新たな対応が求められるようになる。ロス氏は、やがてカメラまわりのデザインから脱却する必要があると考え、毎年それを大きく変えるのではなく、技術トレンドの変化に柔軟に対応できるデザインを確立した。そして、2021年10月に発売したGoogle Pixel 6で、現在の象徴的な「カメラバー」を初めて採用した。
カメラのユニット数に影響を受けることなく、美しく配置できるデザインを追求した結果だった。背面に水平なカメラバーを置くというユニークな発想は、競合するブランドの製品との差別化を図り、Google Pixelのスマートフォンを象徴するアイコンになった。
このカメラバーのデザインを洗練させていく過程で、ある偶然の発見があったとロス氏が振り返る。
「Pixel 9シリーズから、カメラバーのデザインをスマートフォン本体のエッジに合わせてカーブさせ、統一感を持たせました。完成したデザインを見たときにふと、これが『検索バー』の形状と同じであることに気がつきました。私たちはそれを意図したわけではありませんが、結果的にグーグルのアイデンティティをハードウェアのデザインにも色濃く反映させることになりました」
工業デザインの世界には、「Form follows function(形態は機能に従う)」という古くからの原則がある。Pixelのデザイン史は、まさにこの言葉を体現している。当初掲げられた「人間的、楽観的そして大胆」というデザイン原則のもと、初代のGoogle Pixelでは背面を光沢とマットな素材に分けてグリップ感を高めたり、以降も10年の間に様々なアプローチを実践してきた。


