新米の季節を迎えたが、この夏の猛暑で例年通りの供給が確保されるかが危ぶまれている。既に年間の国内の需要量を供給量が下回っている中、外国からの輸入はこの数年で飛躍的に増えており、外食や中食はどんどん安価な外国米に置き換えられているという。
この一年、日本のお米をめぐる状況は「令和の米騒動」と言われるほど激動を続けてきた。
ざっと振り返ってみると、昨夏の不作と買い占めによる供給不足で価格が上昇し、今年3月にようやく21万トンの備蓄米が放出されたものの流通への届きは少なく、失言で江藤農林水産大臣が辞任した後、小泉農相が30万トンを追加放出。しかし9月26日の毎日新聞によれば、ブレンド米などは5キロ3843円と前の週より若干下がったものの、銘柄米は4377円で高値が続いている。
米の高騰には、生産方式や流通の問題、気象条件の変化に加えて、米が投機の対象になっていることなどが指摘されている。一方、店頭価格は高くても生産者の収益が増えていないという農家の声もよく聞かれる。日本特有の減反政策の他、農家の高齢化、小規模経営の増加も、米の供給減に拍車をかけているようだ。
『ごはん』(2017)は、米を巡る日本のこうした構造的な問題を背景に、父の米作りを引き継ぐことになった若い女性の奮闘を描いている。監督は2024年の大ヒット作『侍タイムトリッパー』で広く名が知られた安田淳一。『侍タイムトリッパー』で撮影助監督の山本優子を演じた沙倉ゆうのが、本作のヒロインである。ざっとストーリーを見てみよう。
七月、東京の派遣会社で働く寺田ヒカリ(沙倉ゆうの)は、父の訃報を受け久しぶりに郷里の京都に帰ってくる。そこで彼女が知ったのは、父が近隣の30軒の農家が面倒を見られなくなった、しめて一万五千坪もの田圃を引き受けていたことだ。
手伝っていたのは、源八という九州から流れてきた青年。人生に行き詰まっていたところを偶然ヒカリの父に拾われ、米作りを教わったが、今は足を怪我したばかりで動けない。
育ってきている稲をこのまま放置しておくわけにはいかないという源八や依頼者たちの頼みを振り切って、一旦は東京に帰ろうとしたヒカリだったが、源八の足が直るまでという条件で米作りに関わることになる。
稲作の知識のまったくないヒカリは、源八のレクチャーを毎晩受けながら、日々慣れない農作業に懸命に打ち込む。自転車で広い水田の間を走り回りって水の量を調節し、草刈機で周辺の雑草を刈り‥‥といった労働が続く中、失敗やトラブルも起こる。ようやく待ちに待った出穂を見て秋まで頑張ると決意し、足の治った源八と二人で作業に励むものの、その後もさまざまな試練に見舞われる。



