経済・社会

2025.09.24 15:15

第二期政権下の3年半で5人の首相が就任、仏マクロン大統領が直面する逆風

Photo by Daniel Pier/NurPhoto via Getty Images

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金融市場の反応は限定的だった。米国の格付け機関「フィッチ・レーティングス」は9月12日、フランス国債の格付けを「ダブルAマイナス」から「シングルAプラス」へ引き下げた。同国の脆弱な財政基盤や政治的な混乱の長期化への懸念を反映したものだ。

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2026年度予算の策定に向けた審議の本格化を前に打って出たフランスのフランソワ・バイル前政権の「賭け」は大方の予想通り、裏目に出た。同前政権は9月8日、国民議会で内閣の信任を問う投票を実施。信任投票を自発的に行うのは異例のことだ。

その結果は賛成票194に対して反対票が364。可決にはほど遠く、バイル前首相率いる内閣は総辞職に追い込まれた。それを受けて、フィッチは格下げに踏み切ったが、翌週15日の市場ではフランス国債がむしろ買われ、10年債利回りは小幅の低下(債券価格は上昇)となった。

これは政権の崩壊やフィッチの決定が価格にはすでに織り込まれていたためとみられる。実際、同利回りは8月上旬からジリジリと上昇(債券価格は下落)。9月上旬には今年の3月に付けた水準を上回っていた。

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祝日2日削減に84パーセントが反発

フランスの財政は厳しい状況に直面する。国際通貨基金(IMF)のデータベースによれば、フランスの2024年の政府債務残高(推定値)は対国内総生産(GDP)比で約113パーセント。ユーロ圏20カ国のうち、ギリシャ、イタリアに次ぐ3番目に高い水準だ。その後も悪化が続き、2030年には同128パーセントに達する見込みだ。

同国の財政負担の大きさは手厚い社会保障などが一因とされている。2022年の大統領選に共和党から出馬したイル・ド・フランス地域圏議会のヴァレリー・ぺクレス議長は5月の訪日時のインタビューで、「財政には秩序を取り戻すこと以外、選択の余地はない」と話していた。

バイル前政権も7月、438億ユーロの歳出抑制策を盛り込んだ2026年度の予算策を公表。財政再建策では年金支給額の据え置きや、復活祭(イースター)翌日の月曜日と、第2次世界大戦の「戦勝記念日」の5月8日の祝日2日削減なども打ち出した。

バイル前首相は演説で、「1秒ごとに債務は5000ユーロ増加している」「われわれの歴史における正念場」などと語り、財政の深刻さを訴えた。

だが、国民や野党はこれに強く反発した。祝日の2日削減は経済活動の底上げに伴う歳入増を狙ったものだが、同国の調査会社の「オドクサ」社が「ル・パリジャン」紙の依頼を受けて実施した8月の世論調査によると、84パーセントが反対との結果が出た。

具体的な理由として多かったのは、「国民の祝日が多すぎるとフランス人は思っていない」(80パーセント)、「隠れた新たな税金である」(80パーセント)、「労働時間増への準備がなく、拒否する」(72パーセント)など。「労働時間増と財政再建の関係が見いだせない」との回答も66パーセントに上った。

政府債務残高を対GDP比60パーセント、単年度の財政赤字を同3パーセント以内に抑えるのが欧州連合(EU)の財政ルールだ。フランスの場合、2024年の財政赤字も対GDP比で5.8パーセントと、財政規律に違反した状態だ。

つまり、今回の内閣信任案の否決は、EUがフランスに発した財政収支の是正勧告に応じる同国の緊縮予算の骨子が受け入れられなかったことを意味する。「財政健全化への道筋が不透明になった」(欧州情勢に詳しいエコノミスト)のは疑いないところだ。

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文=松崎泰弘

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