2018年から始まったForbesJAPANの企画「30UNDER30(世界を変える30歳未満の30人)」の第一回目に選ばれた一人が、多国籍ロックバンド・スーパーオーガニズムの日本人ボーカリスト、オロノだった。当時、世界的にブレイクしたバンドではあったが、その後、コロナ禍を経て、活動を耳にする機会は減った。彼女はどこへ行ったのか?
午後8時、閉店後の新宿・伊勢丹デパート3階。客が消えたデパートのフロアにぞろぞろと人々が集まってくる。
「こんばんは、ご無沙汰してます」
声をかけてきたのはオロノだった。2018年にForbes JAPANの表紙に登場して以来の再会だから、7年ぶりである。スーパーオーガニズムのボーカルであり、仏頂面の18歳だった彼女も、今、25歳。機嫌が悪いのか良いのかわからない雰囲気だった18歳が、意外なほど晴れやかですがすがしい表情になっている。
7月5日のこの夜、伊勢丹のセレクトショップ「リ・スタイルプラス」が閉店後にオロノのミニライブを開催した。「100 オロノ Tシャツ」というPOP UPを展開中の店頭で、ファン限定のライブである。ショップ側に熱心なファンがいて、実現したという。
床の上にファンたちがあぐらをかき、そこには外国人の姿も見受けられ、子ども連れの家族から中高年までいる。そんなファンたちの前でオロノはギターを弾きながら数曲を歌った。その途中、彼女はマイクに向かって意外なことを語りだした。
「今日、皆さんに紹介したい人がいます。トム・ノグチ。私の父です。9月に私が発表するアルバムのために、実は彼は仕事を辞めました」
会場に「ええー」という驚きの声が広がる。
私(筆者)も驚き、7年前、初めてオロノに会った場面を思い出した。私がオロノに「2日続けて、埼玉のお父さんにお会いしましたよ」と言うと、彼女は仏頂面でこう答えたのだ。
「だったら、私のインタビューは必要ないと思いますよ」
どうしてそんなことを言うのか。彼女は表情を変えずにこう続けた。
「私も父もほとんど同じ人ですから」
人の行動は、好むと好まざると関係なく、身近な誰かの影響を受けていると思い知らされたのが、オロノ親子だった。当時、インタビューをもとにこの親子の旅を、「中二病の父と18歳の娘、奇跡でクレージーな世界デビュー物語」として、誌面で紹介した。
「中二病の父」と呼ばれる父と娘に、その後、何が起きたのか。いわば、続編となる「デビュー後に起きたこと」を紹介したい。



