音楽

2025.09.22 14:15

【30UNDER30は今】17歳で世界デビューしたSuperorganismオロノに起きた「その後の7年」

デビッド・ボウイ、デレク・トラックスなどのベーシスト

あくまでも音楽で勝負したいと、彼はアルバム制作のためにアメリカから二人のミュージシャンを引っ張ってきた。デビッド・ボウイのラストアルバムでベースを担当したティム・ルフェーヴル、そしてドラムのタイラー・“ファルコン”・グリーンウェルだ。オロノはその二人と新たなバンド「nose noise(ノーズノイズ)」を結成した。ティムはデビッド・ボウイだけでなく、スティングやエルビス・コステロら超一流ミュージシャンのベースを担ってきたベテランである。実は、ティムもタイラーも、トムさんが追いかけ続けてきたデレク・トラックスのバンドメンバーだった。ただのライブの「追っかけ」が食事をする関係になり、20年にわたる歳月とともに「仕事仲間」にまで昇華したのである。「偏愛」を頂点まで極めれば仕事になるという証しだろう。

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このアルバムは、トムさんが立ち上げたレーベルからリリースされる最初の作品となる。レーベルの名前は、Jane F. Records(ジェーン・F・レコーズ)。トムさんが若い頃からアメリカで世話になり、日本からドロップアウトしたオロノの世話もしてくれた女性だったが、天寿をまっとうし旅立った。オロノのミドル・ネーム、「ジェーン」も彼女から付けられたものだ。だから、どうしても新レーベルに彼女の名を刻みたかった。

そして、これもお約束の定番となる風景だが、この親子はやはり新バンドでも喧嘩をしたようだ。私がトムさんとメールのやり取りをしていると、「今ちょっとまずいです」「今、最悪なのですみません」という謎の返事が来ることがあった。あとでわかったが、「バンドのロゴとデザインについて意見を言ったら、オロノと3週間、口をきかなくなりました」のだそうだ。

今回のアルバムタイトルでも意見が食い違った。トムさんが「中二病の親父」というタイトルを提案したら、瞬殺で却下された(確かにそれは却下されて正解だろう)。

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で、アルバムのタイトルはどうなったんですか? そう尋ねると、トムさんは「ちょっとダサいんですが」と前置きしてこう言った。

「TOM」

ティムの「T」、タイラーの「T」、そして努の「T」。3人のオヤジのTから「TOM」と命名されたのだ。

「Forbes JAPANの30UNDER30イベント用に一曲、オロノがつくってみました」

トムさんが曲を私に送ってくれたが、残念ながら、イベントでその曲は使わなかった。
しかし、伊勢丹のミニライブの壇上で晴れやかに父親を紹介する姿を見て、新しい親子の旅が始まったんだと感じずにはいられなかった。そして物語のスタートは、意外な幕開けの方がよく似合う。改めてそう感じてしまうのだった。 

 

写真は9月26日に日本のみ先行発売される新アルバム「TOM」(配信リリースは10月14日)。9月28日にタワーレコード渋谷店で15時から即売サイン会が開かれる予定。
写真は9月26日に日本のみ先行発売される新アルバム「TOM」(配信リリースは10月14日)。9月28日にタワーレコード渋谷店で15時から即売サイン会が開かれる予定。

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文=藤吉雅春

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