音楽

2025.09.22 14:15

【30UNDER30は今】17歳で世界デビューしたSuperorganismオロノに起きた「その後の7年」

「生活拠点はないんですよ」


2018年から2019年にかけて、この頃がスーパーオーガニズムにとっての絶頂期だったのかもしれない。デビューアルバムが世界的に注目され、BBCの長寿番組「レイター・ウィズ・ジュールズ・ホランド」やアメリカ公共放送NPRの名物番組「タイニーデスク・コンサート」に出演。NPRが選ぶ2018年のベスト・アルバムでは12位となり、世界ツアー、コーチェラへの出演、そしてオロノと星野源のコラボが話題になった。

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あれから7年。久しぶりに父親のトムこと野口努さんに再会し、「娘さん、最近どうしているのですか? 拠点はアメリカですか、イギリスですか?」と聞くと、こう即答した。

「生活拠点はないんですよ」

拠点がない?

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「ふらふらしているんですよ。キャンピングカーでアメリカ中をふらふら回ったりしていた時期もありましたが、その後は、友だちの家を泊まり歩いたり」

困ったもんだと言わんばかりの父親の口調だったが、放浪癖は父親譲りだろう。父親も労働で得たカネはほとんど旅に費やしてきた。

スーパーオーガニズムは2022年にセカンド・アルバムを発表し、世界ツアーを行ったものの、コロナ禍での活動が厳しくなり、そのまま開店休業状態になったという。そうしてレコード会社との契約も終了した。ただし、オロノは失意のもとに放浪しているわけではなく、2019年のアジアツアーあたりから単独行動の予兆はあった。

「ロンドンにいるレコード会社のマネージャーから私のところによく電話がかかってくるようになり、『オロノがどこにいるか知っているか?』と言うんです。電話に出ないし、メールも返信がないというのです。そこで、シンガポールとバンコクのコンサートは私がついていくことになり、バンドメンバーたちには私から「申し訳ないね」と謝りながら、本人に付き添ったのですが、一緒にいるからといって会話があるわけではないです」

中学をドロップアウトしてアメリカに渡ったのだから、今さらホームシックというわけではないだろう。トムさんは保護者のように、「自分で決めたことは喜んで行動するんですが、ツアーなど誰かが決めたことに縛られるのが苦手のようです」と分析する。

その後、バンドとの関係もよくなり、二枚目のアルバムを完成させた。レコード会社との契約が終了したのは、二回目の世界ツアー後だった。それは順風満帆だったサクセスストーリーの挫折と捉えられるかもしれないが、むしろここからが彼女が「自分の人生」を掴んでいっているように見える。

「最初、あいつの行動には頭に来たんですよ」と、トムさんは言う。

「アメリカにいる私の友だちを紹介してくれと言い、そこに泊まりに行くのです。私の友だちの家を転々として、二回目からは自分で連絡して勝手に泊まりに行く。そこで、食事もごちそうになっているのです。私が怒って、友人たちに『ひとこと言ってよ、俺に』というと、みんな、『なんでお前に言う必要があるんだ。お前の娘が泊めてくれと言うから泊めてやっただけだ』と言う。しかもどの友だちもオロノと仲良くなっている」

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文=藤吉雅春

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