北米大陸でアメリカライオンと共存した巨大動物にはマンモス、マストドン、オオナマケモノ、そしてスミロドン・ファタリスをはじめとする剣歯虎(いわゆるサーベルタイガー)などがいた。この生態系において、アメリカライオンはおそらく最上位の捕食者であり、ダイアウルフの群れや、「ショートフェイス・ベア」とも呼ばれるクマ科のアルクトドゥスと争っていたようだ(アルクトドゥスは、当時の規格外の巨大肉食獣であり、体重1トン近くに達していた)。
アメリカライオンは、開けた草原、林縁、氾濫原といった生息環境を好んだと考えられる。こうした環境は、バイソンやティタノティロプス(北米に生息していた巨大ラクダ)、ウマ、さらには若いマンモスなどの獲物が豊富だった。
骨化石の同位体分析から、アメリカライオンの食性は、現生のアフリカライオンと極めてよく似ていたことがわかっている。アメリカライオンもまた、待ち伏せや瞬発力に頼った短距離の追跡で、大型の草食動物を倒していたのだ。
現生ライオンの亜種か、それとも独立種か
アメリカライオンを現生ライオンの亜種とするか、それとも独立種とするかをめぐっては、長年論争が続いている。形態学的には、アフリカライオンと共通する特徴が多数見られるものの、一方で、すでに絶滅したユーラシアのホラアナライオン(学名:Panthera spelaea)とのつながりを示唆する形質も備えている。
いくつかの遺伝学研究から、アメリカライオンは、約34万年前にホラアナライオンの系統から分岐し、ライオンの系統樹のなかで唯一無二である「北米の枝」を構成したことが示唆されている。分類上の位置づけはともかく、サイズ、力、適応能力を試す、一つの進化的実験だったと考えることができる。
アフリカライオンは社会性をもち、プライドと呼ばれる群れで生活するが、アメリカライオンが同様の社会行動を示したかどうかははっきりしない。化石記録からは、行動に関する明確な答えを得ることはできないのだ。一部の古生物学者は、彼らはむしろトラのように、単独または小規模な家族集団で狩りをしたと考えている。一方、特に大型の獲物を倒す際には、ある程度の社会的協力が存在しただろうと考える研究者もいる。


