米ウォルト・ディズニー傘下のABCネットワークが人気トーク番組「ジミー・キンメル・ライブ」の放送を無期限で停止した。司会者のキンメルがチャーリー・カーク殺害事件をめぐり、MAGA勢力の政治的取り繕いやトランプ大統領の軽薄な態度を痛烈に批判した直後のことだ。米国では憲法修正第1条が「言論の自由」を強く保障しており、政府が直接メディアを規制することはできない。しかし、放送免許の更新や買収承認といった重要決定を連邦通信委員会(FCC)が握っているため、これを利用し政権が圧力をかければ事実上の制裁となり得る。法律専門家は、トランプ政権による「ジョーボーニング」(公的立場を利用した圧力)が背景にある可能性を指摘し、「言論の自由」の侵害が疑われている。
放送停止の決定とFCCによる発言のタイミングが重なり、疑念が広がる
ディズニー傘下のABCは9月17日、キンメルの番組を「無期限」で停止にすると発表した。この決定は、ABC系列局を保有するネクスター・メディア・グループが、15日のキンメルによるカークの死とその反応に関するコメントを理由に同番組を放送枠から外すと表明した後に下された。ネクスターは現在、競合のテグナの買収を計画しており、その完了にはトランプ政権の連邦通信委員会(FCC)の承認が必要だ。
この突然の動きが特に懸念を呼んだのは、ABCがこの措置を発表する数時間前に、FCCのブレンダン・カー委員長が同ネットワークに向けて、キンメルに処分を下すように呼びかけ、「我々には、穏便に済ませる方法もあれば、厳しい方法もある」と、規制権限の行使をほのめかしたからだ。
ジョーボーニングとは何か? 言論の自由を巡る法的な論点
ABCとネクスターは、カー委員長の発言が彼らの判断に影響したことを示すいかなる兆候も示していないものの、法律の専門家は、タイミングから見て、トランプ政権の脅しがABCやネクスターに不当に圧力をかけ、キンメルを処罰させた可能性があると懸念している。この措置は、「ジョーボーニング」に該当する可能性がある。
リバタリアン系シンクタンクのケイトー研究所によれば、ジョーボーニングは、「公的発言を利用して不適切に民間に行動を強制すること」を意味する。政府や公職者は、自分たちが気に入らない発言をする民間の主体を直接罰することはできないが、強圧的な手法を用いて批判者を間接的に黙らせたり、企業の行動に影響を与えることができる。
この慣行は定義が非常に曖昧で、「違反をどう取り締まるかを定めた法的枠組みも十分ではない」と、言論の自由を守るための団体のナイト憲法修正第1条研究所は指摘している。しかし最高裁は、具体的な脅しを伴う場合は違法であり、修正第1条に違反すると繰り返し判断してきた。
ホワイトハウスはフォーブスに対し、ABCがキンメルを停止した決定に「関与していない」と述べた。FCCやABCニュース、ネクスターは、トランプ政権やカー委員長がABCの決定に影響を及ぼしたという主張に関するコメント要請に応じなかった。



