北米

2025.09.19 16:30

「トランプ政権の圧力」疑惑でABCが人気番組を無期限停止、司会の発言巡り言論の自由に波紋

ジミー・キンメル(Photo by Maya Dehlin Spach/WireImage)

キンメルが番組でMAGA勢力とトランプ大統領の対応を痛烈に批判

キンメルは、15日の番組内で、「週末にひどいことが起きた。MAGA(米国を再び偉大に)の連中は必死になって、チャーリー・カークを殺したこの若者が、自分たちとは全く違うと見せかけようとし、この事件から何としてでも政治的な得点を稼ごうと、できる限りのことをしている」と述べていた。

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司会者のキンメルはまた、カークの死に対するトランプ大統領の反応に矛先を向け、事件の2日後のFOXニュースの番組に出演したトランプが、司会者の質問をかわしてホワイトハウスに新しい舞踏室を建設中であることを宣伝する映像を流した。

「トランプは悲嘆の第四段階にいる──それは『建設』だ」と、キンメルはトランプを揶揄し、「これは、自分の友人だと呼んでいた人物の殺害を大人が悼むやり方ではない。4歳児が金魚の死を悲しむようなものだ」と続けた。

SNSで銃撃事件を非難し犠牲者への連帯を表明

一方でキンメルは、カークの殺害をより明確に非難するコメントも残しており、先週のSNSにこう書き込んだ。「怒りの非難合戦をする代わりに、たった1日でいい、他人を撃つことが恐ろしく忌まわしい行為だという意見で一致できないだろうか。私の家族を代表して、カーク一家や無意味な銃暴力の犠牲となったすべての子どもたち、親たち、罪のない人々に愛を送りたい」

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トランプ政権とFCCが放送局に圧力を示唆し、免許権限に言及

FCCのカー委員長は17日、ABCの決定に先立ち行った右派のコメンテーターのベニー・ジョンソンとの対談でキンメルのカークの死に関する発言を非難し、ABCが何らかの処分を行わなければ、FCCがABCの放送免許を取り消す可能性に言及した。

「これらの企業は行動を改めることが可能だ。率直に言えばキンメルに対して行動を起こすべきだ。さもなくば、FCCが動かざるを得なくなる」とカー委員長は述べ、系列局を運営する企業はネクスターがキンメルの発言直後に放送中止を決めたように、彼の発言を理由に番組の放送を拒否すべきだと示唆した。

「ライセンスを持つ放送局自身が立ち上がり、『この問題が解決するまでキンメルの番組は放送しない』と表明すべき時に来ていると私は思う」とカー委員長は語った。

同委員長はその後、ABCがキンメルを降板させた決定を称賛したが、それが自身の発言を受けたものだとは考えていないとし、Xへの投稿で「放送局は長らく、自らが公共の利益に反すると判断する全国番組を放送しない権利を持ってきた」と記し、「多くの放送局が視聴者の声に応じて動いているのをうれしく思う」と述べた。

トランプ大統領も17日夜にABCの決定を称賛し、「アメリカにとって素晴らしいニュースだ」と述べた。ただし翌日、記者団に対しては、キンメルは「何よりも低視聴率が原因で解雇された」と主張した。さらに、自身が好まないコンテンツに対し、より多くの放送局が措置を講じるべきだと示唆し、主要ネットワークは「97%が私に反対しており、悪い報道しかしていない」とした上で、「彼らの免許は取り消されるべきかもしれない」と付け加えた。

共和党内部からも脅しへの反発が起き、メディアとの関係が緊張

右派系の著名なコメンテーターであるカークは9月10日、ユタ州の大学キャンパスでの公開イベント中に銃撃を受け、死亡した。この事件は、表現の自由や、いわゆるヘイトスピーチ、あるいはトランプ政権が好まない主張をした場合に人々が処罰され得るのかという新たな論争を引き起こした。トランプ政権の当局者は、カークの死を喜ぶような発言を行った左派の人物を処罰すべきだと示唆している。

こうした脅しに対しては、共和党内部からも反発が出ている。共和党は長らく、民主党やいわゆる「キャンセルカルチャー」による攻撃に直面するなかで、表現の自由の重要性を主張してきたからだ。ABCがキンメルの番組を放送中止にした決定はまた、ABCや他の報道機関が、すでにトランプからの脅しに屈する姿勢を見せていた状況の中で下されたものでもある。ABCやCBSは、トランプが自らの番組を相手取って起こした訴訟で高額の和解金を支払っている。

CBSの親会社パラマウントも7月に「レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア」を打ち切った。パラマウントはその理由を番組の採算性への懸念だと説明したが、この決定は、コルベアがトランプを批判していたことや、パラマウントが大統領と和解した直後のタイミングであったことから批判を浴びている。

forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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