復帰の可能性を巡る動き、ABC内部と系列局に広がる対応
ABCがキンメルの番組を再開させるかどうかは依然として不透明だ。ただしウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は17日、ディズニーが「数日以内に番組を復帰させる可能性を視野に入れている」と報じた。しかし、シンクレア・ブロードキャスト・グループのようにABCの系列局を傘下に持つ企業は、現時点でキンメルの復帰を受け入れる姿勢を示していない。同社は、ABCが番組を放送中止にしただけでは不十分だとし、司会者に対して「カークの遺族への直接の謝罪」とカーク家および保守系団体「ターニング・ポイントUSA」への有意義な個人的寄付を求めている。
ネクスターもまた、テグナの買収の承認を得るためにトランプ政権の歓心を買う必要があることから、キンメルの番組を放送しない姿勢を維持すると見られている。一方、司会者のキンメル本人は、番組を休止させたABCの決定についてまだ何も発言していない。また、キンメルが、トランプ政権による政治的圧力やABCに対する不当な強制を理由に法的措置を取るかどうかも不明だ。
「典型的なジョーボーニングだ」──法律の専門家がカー委員長の発言を批判
複数の法の専門家は17日、カー委員長のABCに対する発言が、直接的にキンメルの番組の放送中止につながったと指摘し、「典型的なジョーボーニングだ」と批判した。言論の自由を擁護する団体「FIRE」の訴訟部門ディレクター、ウィル・クリーレイは、カー委員長の「穏便に済ませる方法もあれば、厳しい方法もある」という発言が、「修正第1条が禁じるジョーボーニングを自ら認めたに等しい」と批判した。
ジョージア州立大学のアンソニー・マイケル・クライス法学教授もXに、「民間企業は自らの判断で何をしようと自由だが、国家権力を持つ者には憲法修正第1条に従う義務がある」と投稿し、「今回の連邦政府によるジョーボーニングはきわめて憂慮すべきものだ」と付け加えた。
最高裁が過去の判例で示した、政府による脅しの違憲性
憲法修正第1条の擁護者らがマイアミ・ヘラルドに語ったところによれば、政府高官が民間人の発言について単にコメントするだけなら、それ自体は違法ではない。しかし、その発言に基づいて当該人物や企業に対して措置を取ると脅す場合、それは違憲となり得る。
連邦最高裁は1963年に起きたロードアイランド州の委員会が出版社や書店に対し、特定の本を「未成年に不適切」として販売しないよう圧力をかけていた「バンタム・ブックス対サリバン」事件で、「政府が発言に影響を与えるような脅しを行うことは許されない」と判断し、その後の判例でもこの決定を支持してきた。
直近では2024年、最高裁は、全米ライフル協会(NRA)をめぐる訴訟で、「ニューヨーク州の当局者が企業に対しNRAと取引しないよう不当に圧力をかけた」とするNRAに有利な判決を下し、ジョーボーニングを非難した。ソニア・ソトマイヨール判事は全会一致の判決文の中で、「重要な点は、政府高官が権力を選択的に行使して発言を処罰または抑圧することを、憲法修正第1条は禁じていることだ」と記していた。


