ここから得られた教訓は何だろうか? 制裁は選択の幅を狭めるかもしれないが、完全に封じ込めることは難しいということだ。デジタル金融企業にとっては、シナリオ立案の重要性が示されている。規制当局が制裁の適用を、人工知能(AI)やブロックチェーンといった新たな分野にまで拡大する場合、企業側はコンプライアンス対策を再構築するための戦略が必要となる。国境を越えた決済や送金、あるいは組込型金融分野の新興企業を評価する投資家は、これらのプラットフォームが規制上の衝撃に対してどれほど耐性があるかを評価すべきだ。
制裁の国際的な力学の変化
制裁は依然として、米国の力を示す重要な手段だ。だが、制裁の効果は今や米政府の単独決定では不十分で、むしろ国際的な連携の重要性が増している。中国とロシアの2024年の二国間貿易額が過去最高の2340億ドル(約34兆6000億円)に達したことが示しているように、協調を拒む国々は影響を弱める逃げ道を創出する。
この力関係の変動は、フィンテック業界にリスクと機会の双方を生み出す。グレーゾーン取引を可能にする企業は、監視の強化に直面している。一方で、コンプライアンス技術やリアルタイムリスク監視、AIを活用した制裁スクリーニングに対する需要が高まっている。本人確認やマネーロンダリング(資金洗浄)対策の手続きを自動化できる新興企業は、細分化が進む規制体制を乗り切らねばならない企業を、顧客として獲得する態勢を整えている。
実際面では、かつて摩擦のない国際送金を売り込んでいたフィンテック企業は、今やコンプライアンスを欠陥ではなく機能として位置付けねばならない。投資家もまた、ポートフォリオ企業が制裁の波及効果に備えているかどうかを評価する必要がある。対象は、ロシアのような地政学的に不安定な市場だけでなく、半導体やエネルギー資源、AI基盤など、米国の政策が次に方向転換する可能性のある分野にも及ぶ。
将来の制裁でフィンテックが果たす役割
ロシアの事例が明らかにしているのは、制裁がなくなることはないという点だ。むしろ、制裁は世界の金融業界における恒久的な要素へと進化しつつある。フィンテックにとって、これは制約であると同時に触媒でもある。制約は明らかだ。これには、コンプライアンス対策費用の増加や国際展開の遅延、規制当局による監視の強化などが含まれる。他方で、触媒も同様に強力だ。高性能な技術を駆使したコンプライアンス対策への需要と、多極化した世界に向けた金融基盤を構築する機会は、曲がりくねったトンネルの先に差し込むかすかな光だ。
制裁が貿易の様相を変える中、フィンテックは最前線に立っている。勝者となるのは速度と規模だけでなく、回復力と適応性を備えたシステムを構築する企業だ。地政学と技術革新の対決の中で、制裁が機能するか否かはもはや焦点ではなく、フィンテックが戦場をいかに変革するかが鍵となっている。


