KDDIや日清が挑む「インパクト会計」、ポストESG時代の新常識となるか

(写真左から)柳 良平・矢野絹子・横山之雄・佐竹 亮・五十嵐剛志

「製品 & 従業員」インパクト会計

横山之雄(以下、横山日清食品ホールディングスでも、企業価値の最大化をどのようにとらえ、評価し、推進するかという問題意識から、21年から柳モデルを活用し「ESG(非財務価値)と企業価値の関係性」の定量・定性分析の取り組みを実施した。23年度から分析手法を深化させながら、インパクト会計に挑戦した。

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当社の中長期的な成長戦略テーマのひとつである環境戦略「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」にて目標に掲げている「持続可能であると判断できるパーム油調達の比率を30年度までにグループ全体で100%」を実現するための活動や、雇用によって創出される地域社会・ダイバーシティへの貢献がもたらす社会的インパクトを数値化し、「製品インパクト会計」「従業員インパクト会計」を用いて金銭価値に換算する分析を行った。

製品インパクト会計では、RSPO認証パーム油の使用が社会にプラスのインパクトを与えることを可視化でき、さらに認証品の調達にかかわる費用を上回る社会的インパクトを創出していることを定量的に確認できた。従業員インパクト会計でも、総賃金に占めるインパクト比率(総賃金のうちの社会的インパクト創出の割合)が約67%と判明し、ハーバード・ビジネス・スクールが実施した米国企業の試算結果と比較しても遜色ない結果であることが定量的にも確認できたカタチだ。

インパクト会計を実際にやってみると難しく、我々も紆余曲折があった。スコープを狭めると精緻に測定・開示できるが、インパクトの範囲が限定的になる。半面、スコープを広げると測定・開示が難しい。製品インパクトについて、RSPO認証パーム油から始めたのはそれが理由だ。

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また、インパクト会計においては、自社の「企業特性」が出るという面も感じた。今回の試算結果では、当社として進めてきた人事施策により、インパクト比率を米国企業と遜色ない結果まで押し上げることができた。現在進めている男女の昇格格差・賃金格差に関する制度変更を含めた社内改善で、さらなるインパクト創出につなげることができることも定量的に確認できた。

横山之雄◎日清食品ホールディングス常務執行役員兼米州総代表。みずほ銀行(旧:富士銀行)の執行役員を経て、2008年に日清食品ホールディングス入社。執行役員財務部長を経て、10年以降はCFOとして財務部門を統括。21年CSOに就任し、ESG課題を含む経営課題に対処しながら独自のCSV経営を追求し、中長期成長戦略成就に向け取り組んできた。25年4月より現職。
横山之雄◎日清食品ホールディングス常務執行役員兼米州総代表。みずほ銀行(旧:富士銀行)の執行役員を経て、2008年に日清食品ホールディングス入社。執行役員財務部長を経て、10年以降はCFOとして財務部門を統括。21年CSOに就任し、ESG課題を含む経営課題に対処しながら独自のCSV経営を追求し、中長期成長戦略成就に向け取り組んできた。25年4月より現職。

柳:KDDI、日清食品ホールディングスともに、経営トップのコミットメントがあり、矢野さんや横山さんがリーダーシップをもち、カタリスト、エバンジェリストとして、社内に徹底させている点が素晴らしい。そして、インパクト会計の測定、開示によって、社内フィードバックをし、社内改善に生かしている。従業員のエンゲージメント、モチベーション向上にもつながり、大きな「人的資本活性化」というメリットもある。VBAでは、80社の導入事例をもとに、1. ステークホルダーとの対話に生かす、2. 戦略企画に生かす、3. 財務業績の向上に生かす、4. サステナビリティ活動に生かす、とその目的を整理しているが、まさにそれを実施しているカタチだ。

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文=山本智之 写真=平岩 亨

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