経営・戦略

2025.10.01 14:15

酒味ラテで売上20億円 香港『瑞幸珈琲』の独創戦略、注文は中国語オンリー

筆者撮影

筆者撮影

以下、香港在住のインタビューライター、ベック知子氏による寄稿である。

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注文カウンターのないカフェ


「え、スタバの真横に?」


香港のデパート内を家族で歩いていた時のことだ。休憩をしようとカフェを探し、スターバックスを見つけたが、案の定ここも満席だ。他のお店を探そうと思ったその時、すぐ横に別のカフェがあることに気づいた。おしゃれな雰囲気のその空間にわずかの空席を見つけ席に着く。

しかし、コーヒーを頼むための注文カウンターが見あたらない。代わりに目に入るのは、スマホ片手にコーヒーを受け取る人たちだ。普通のコーヒーショップと何かが違う……。

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店内を見渡すと、青い鹿のロゴの上に「ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)」とある。「スターバックスを脅すほどの勢いで勢力を拡大している」とも言われる中国発のコーヒーチェーンだ。

店内にはレジはなく、すべてスマホのアプリか、店頭スクリーンでのオーダー制だ。さっそくアプリのダウンロードを試みるが、「お住まいの地域では取り扱っておりません」とエラーメッセージが出る。私は香港に住んでおり、香港の電話番号でダウンロードを試しているのだが。

店員さんに聞けば、店舗にあるスクリーンから注文ができるとのこと。ほっと胸をなでおろしスクリーン上のQRコードをあてるがこれも反応しない。スクリーンの前で注文できず途方にくれているのが、私たち以外にも2組いたことに、少し安堵する。

注文は「中国語オンリー」!


スマホ片手に奮闘すること10分弱。中国語の表記の中、漢字からその意味を想像しながらなんとか注文を完了する。この間に店員が3回も様子を見に来て、操作を手伝ってくれた。

「ごめんなさいね、英語の表記はないんです……」と苦笑いしながら平謝りする店員たちに罪はない。しかし、香港の公用語のひとつが英語であるにも関わらず、中国語でしか注文ができないとはどうしても一方通行な印象が残る。注文には香港の電話番号での登録が必須であり、初回利用者にはややハードルが高い。

アプリが使えない人は、店舗のスクリーンでオーダーができる
アプリが使えない人は、店舗のスクリーンでオーダーができる

注文を完了し、コーヒー受け取りエリアで待つと、5分もたたずにコーヒーがでてくる。カウンターにはレシートとコーヒーがずらりと並ぶ。コーヒーの味にそれほどうるさくない筆者にとって、味は「普通においしい」と感じた。

ちなみに、Googleマップのお店の評価を見ると、中国語を話せない客からの評価は厳しめだ。「旅行者はアプリがダウンロードできないなんて!」「英語のメニューがないなんてばからしい」「英語は香港の公用語じゃないの? 英語で注文がきないのが理解できない」

香港の人たちはこの中国発のコーヒーチェーンをどう見ているのだろう? 隣の席で談笑する40代くらいの3人の女性たちに聞いてみると、「隣のスターバックスが満席だったからここに来た」と私たちと同じ理由であった。今いるカフェが中国発のブランドであることを知らなかったらしく、驚きながら「味は悪くはなかったけど…」と少し困惑した表情だ。

別のテーブルの30代くらいの男性に話を聞けば、価格にひかれて訪れたと言う。「アプリで会員になると最初の一杯が15.9香港ドル(約300円)の割引価格で購入できるから、アプリをダウンロードして会員になったよ。味はおいしかったよ」

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文・写真=ベック知子 編集=石井節子

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