経営・戦略

2025.10.01 14:15

酒味ラテで売上20億円 香港『瑞幸珈琲』の独創戦略、注文は中国語オンリー

筆者撮影

「中国本土ブランド」の存在感が強まる香港

ラッキンコーヒーの急拡大は、香港でじりじりと進行している「ブランド地図の塗り替え」の一部ともいえる。

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ティーブランドの「喜茶」「蜜雪氷城」や火鍋の「海底撈」「劉一手」など、中国本土発のブランドが次々と香港に進出し、存在感を増している。CBRE香港の調べによれば、2025年に香港に新規参入したブランド・企業のうち、中国本土発のブランドが占める割合は35%にまで達し、前年の29%から増加している。

中国ブランド浸透の背景には、中国本土からの移住者の急激な増加と、物価高のなかでの消費行動の変化が指摘されている。以前は香港でも「中国=安くて質が悪い」というイメージが強かったが、今は「値段に合った価値があるか」が重視されるようになっている。特に若い世代の「中国ブランド」へのネガティブな意識は弱まり、「自分に合うか」で選ぶ時代になっている。

ラッキンコーヒーの日本進出はまだだが、アメリカに続き日本市場に挑む可能性も十分にある。もし同じ低価格とスピード重視の戦略を持ち込めば、日本のコンビニや既存チェーンにとって大きな試練となるだろう。

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では、日本で私たちはどうするのだろうか。静かな空間と特別な体験か、スマホで完結の「コスパ」や「タイパ」か。スターバックスの緑と、ラッキンコーヒーの青。その看板が並んで日本の街に現れたら、あなたはどちらのカップを手に取るだろうか。




ベック知子(べっく・ともこ)◎香港在住のインタビューライター。東京外国語大学外国語学部スペイン語学科卒業。民放キー局で15年以上にわたり、アメリカ政治や国際情勢の取材に携わる。2022年からはアフリカ・タンザニアに拠点を移し、フリーランスとして独立。現在は香港を拠点に、グローバルに活躍する日本人の姿や、現地発のレポートを国内外のメディアに届けている。著書に『40代からの人生が楽しくなる タンザニアのすごい思考法(Kindle版)』がある。

文・写真=ベック知子 編集=石井節子

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