北米

2025.09.17 11:00

TikTok売却交渉で米中が「枠組み」合意、習近平とトランプの影響力を断ち切れるか

miss.cabul / Shutterstock.com

トランプの影響力を排除するには、政府不介入の保証が不可欠

トランプの影響力を断ち切るには、取引を完全に民間の枠内にとどめる必要がある。具体的には、政府にアプリの所有権や支配権を与えず、データや情報流通に関する特別な権限も認めないことだ。トランプは当初TikTokを禁止しようとしていたが、その後、このアプリが自らの再選に役立つと判断すると考えを変えた。彼は放送局や大学、法律事務所から、そして今では巨大テック企業に至るまで、民間企業に対して自らが継続的な影響力を持てる条件を交渉しようとしてきた。TikTokに対してもそうした支配を主張すれば、このアプリは政府の広報機関になりかねない──しかも皮肉なことに、それは中国政府ではなく米国政府のためのものとなる。

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バイデン前政権の教訓、TikTokへの政府権限拡大を狙った秘密交渉の過去

このような政府による支配が現実味を帯びるのには理由がある。過去に実際に、同様の事態が目前まで迫ったことがあるからだ。2021年から2022年にかけて、バイデン前政権も、バイトダンスとの独自の取引を模索した。その秘密交渉には、懸念すべき内容が含まれていた。大統領府にTikTokのデータを検査する権利を与えること、そしてプラットフォーム上の言論に対し、前例のない継続的な権限を行使できるようにすることだ。数カ月に及ぶ協議の末、政府は交渉から手を引き、合意は成立しなかった。しかし、バイトダンスは当時、大統領にTikTokに対する広範な権限を認める姿勢を示しており、その譲歩を再び行う可能性もある。

交渉が最終局面を迎えていた2023年、バイデン前政権との交渉が最終局面を迎える中で、TikTokのCEOは議会に対し、同アプリは「いかなる政府によっても操作されることはない」と約束した。だが、政府にプライバシーやコンテンツポリシーに関する権限を与えること自体、言論操作を認めるに等しいという見方もできる。バイデン政権との合意案には、まさにそうした内容が盛り込まれようとしていた。いずれにせよTikTokは、米国内での事業継続と引き換えに、編集権限を米国政府に譲り渡す用意があった。

トランプ政権の真意は何か――米国民は取引の詳細と政府の関与を知るべき

今回は、交渉のテーブルに何が載っているのかは分かっていない。取引が進むのであれば、トランプにとってどんな利点があるのかを知る必要がある。TikTokはどのような状況下で、またどのような目的で政府とデータを共有することに合意するのだろうか? 政府はTikTokの人事やコンテンツの選定、番組編成、編集判断に、直接的あるいは間接的にどのように関与するのだろうか? バイトダンスと政府は再び秘密裏に取引を進めている。米国民は、トランプと習近平が本当に『停止スイッチ』を手放そうとしているのかどうかを知って然るべきだ。

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forbes.com 原文

翻訳=上田裕資

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