火星探査車パーシビアランスが2024年にジェゼロクレーターから採取した岩石サンプル(試料)には、古代の微生物の痕跡が含まれている可能性があるとする研究結果を、NASAの科学者チームが発表した。今回の研究結果をまとめた論文は学術誌Natureに10日付で掲載された。
「サファイアキャニオン(Sapphire Canyon)」と呼ばれるこのサンプルは2024年7月、火星のブライトエンジェル(Bright Angel)地域にある「チェヤバフォールズ(Cheyava Falls)」の愛称で呼ばれる赤みがかった矢尻形の岩から採取された。2021年にパーシビアランスが古代の湖および三角州の跡であるジェゼロクレーターの調査を始めて以降に収集した27個の岩石サンプルの1つだ。
第2次トランプ米政権の運輸長官で、NASAの暫定長官を務めるショーン・ダフィーは「今回火星で潜在的なバイオシグネチャー(生命存在指標)が同定されたことは画期的な発見であり、これによって火星に関する理解が前進するに違いない」として「火星での生命発見にこれまでで最も近づいた」と続けた。
火星の生命:「レオパルドスポッツ」の発見
Natureの論文によると、今回のサンプルで検出されている独特なレオパルドスポッツ(ヒョウの斑点模様)は、藍鉄鉱(ビビアナイト、含水リン酸鉄)やグリグ鉱(グレイガイト、硫化鉄)などの鉱物の特徴を有している。地球では、藍鉄鉱は堆積物、泥炭湿地や腐敗性有機物の周囲などに見られ、グリグ鉱は一部の種類の微生物によって生成される可能性がある。
レオパルドスポッツは、数十億年前に微生物の生命を支えていたかもしれない化学反応の生成物である可能性がある。NASAによると、もし微生物が岩に含まれる有機炭素、硫黄、リンなどの成分をエネルギー源として利用していた場合、微生物によってこのような斑点痕が残される可能性があると考えられる。だが、どちらの鉱物も生物が存在しなくても生成される可能性もある。
論文の筆頭執筆者で、米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校に所属するパーシビアランス担当サイエンティストのジョエル・ヒューロウィッツは「ブライトエンジェル層で発見された化合物の組み合わせは、微生物の代謝のための豊かなエネルギー源となった可能性がある」と述べている。
火星の生命:「バイオシグネチャーの可能性」
現在のところ、サファイアキャニオンはバイオシグネチャーの可能性のあるものと見なされているにすぎない。ヒューロウィッツは「これらすべての説得力のある化学的特徴が今回の分析データで確認されたからといって、まだバイオシグネチャーの可能性のあるものが得られたと決まったわけではない」として「このデータが何を意味する可能性があるかを細かく検討する必要があった」と説明する。NASAは「生命存在の有無について結論を出すには、さらなるデータと調査が必要」としている。



