今回のサンプルに対するこのような慎重な反応は、決定的な証拠がないことに起因する。パーシビアランスは、サンプルを検査するための分析機器を搭載しているが、分析の対象範囲が限られている。NASAのジェット推進研究所(JPL)に所属するパーシビアランスのプロジェクトサイエンティストのケイティ・スタック・モーガンは「宇宙生物学的な主張、特に過去の地球外生命体の発見の可能性に関する主張には、並外れた証拠が必要だ」と述べた。
火星の生命:次なるステップ
今回の分析データについては、さらなる調査のために一般公開されるが、サファイアキャニオン・サンプルが実際に火星の生命の痕跡を含んでいるかどうかを証明する方法は1つしかなく、それは徹底的な科学調査のためにサンプルを地球に持ち帰ることだと、NASAは明言している。
パーシビアランスは、火星の岩石サンプルを地球に持ち帰ることを目的とする一連のミッションの第一弾になると考えられている。パーシビアランスが何年間も任務に忠実に集め続けている岩石サンプルは、最終的に地球に持ち帰るために残されている。今回の論文では「最終的には、この地質体から採取されたコアサンプルを地球で高感度の測定装置を用いて分析することにより、サンプルに含まれる鉱物、有機物、岩石組織などの起源を突き止めるために必要な測定値を得ることが可能になる」と説明されている。
火星の生命:火星サンプルリターン計画
果たしてこれが実現されるかどうかは、現時点ではまだわからない。NASAと欧州宇宙機関(ESA)による火星のサンプルリターン(地球外の天体からサンプルを採取して地球に持ち帰る探査方式)計画では、おそらくパーシビアランス本体か小型ヘリのインジェニュイティ(Ingenuity)のようなドローンを用いてサンプルを寄せ集めて火星上昇機(MAV)の中に入れ、カプセルを打ち上げて地球に持ち帰ることになっている。
この計画が実現するのは最短でも2030年代後半になる見通しだが、ここ数年は計画の進行が完全に行き詰まっているように見える。2024年4月にNASAは民間企業に対し、110億ドル(約1兆6000億円)に上ると推定される費用を削減するための支援を呼びかけた。
今年はトランプ政権がNASAの予算の24%削減を計画している状況にあっては、火星の生命の確証を得るのはもどかしいほど達成が困難なままになりそうだ。


