カリフォルニア州の高速鉄道計画は2008年に住民投票で承認された。その後、建設費は当初の3倍を超える規模に膨らみ、全米メディアからは「迷走する公共事業」と批判されてきた。こうした遅れとコスト超過を理由にトランプ政権は2019年以降、連邦補助金の撤回・返還請求を仕掛け、州と対立している。今回の追加資金投入の背景には、この政治的対立がある。加えて、所得水準が低く失業率も高い初期区間、セントラルバレーを完成させなければ計画全体が頓挫しかねないという危機感を州側が強めていることも大きな要因だ。
約2.9兆円を追加投入、カリフォルニア州議会が高速鉄道を支援
カリフォルニア州議会は、資金難に陥っている州の高速鉄道計画に対し、最大200億ドル(約2.9兆円)の追加資金を投じる計画を進めている。この資金は、セントラルバレー区間の初期工事の完了と、サンフランシスコやロサンゼルスに向けた延長工事の着手を後押しするものだ。こうした財源確保の動きと並行して、州は、承認済みだった40億ドル(約5880億円)の連邦補助金を取り消したトランプ政権を相手取る訴訟も起こしている。
議会はまた、温室効果ガスの大規模排出事業者に排出権を購入させる「キャップ・アンド・トレード」制度を2045年まで延長し、その収益から今後20年間、毎年10億ドル(約1470億円)を鉄道計画に充てる方針を打ち出した。この取り組みはギャビン・ニューサム知事が主導している。
建設費は当初の3倍超、約15兆円規模に膨張し工期も大幅に延長
今回の資金拠出は、2008年に有権者が100億ドル(約1.5兆円)の債券発行を承認して以来、最大規模の支援となる。鉄道の建設費は当初の3倍以上となり、総額1000億ドル(約14.7兆円)を超えている。工期も大幅に延びているが、全長約275キロメートルの最初の区間では近年工事が進み、作業のペースも加速している。
「今回の合意はカリフォルニアの未来に向けて大きく力強いメッセージを示すものだ。雇用を創出し、汚染を減らし、州全体の地域をつなぎ、変革することになる」と、高速鉄道のイアン・チョードリCEOは声明で述べた。「この資金拠出の合意は、セントラルバレーにおける初期運行区間のすべての資金不足を解消し、プロジェクトへの官民の実質的な参入に道を開くことになる」。



