生物種の「最後の生き残り」は、絶滅というものが過去の話ではなく、今も我々の周囲で起きていることを、はっきりと思い出させる存在だ。例えば、ガラパゴス諸島のピンタ島に生息していたピンタゾウガメの「ロンサム・ジョージ」がそうだ。
1971年に発見され、当時の推定年齢が約60歳とされたこの個体は、2012年に死亡した。少なくとも地球の長い歴史のなかでは、ごく最近の出来事だ。
彼の死は、単なる個体の生命の終わりではなく、純血種のピンタゾウガメの血統が絶えたことを意味した。彼は、「エンドリング(endling)」、すなわち、その生物種の最後の生き残りだった。
エンドリングという言葉が一般に認識されるようになったのは、20世紀末頃のことだ。この言葉はもともと、1996年4月に『Nature』誌に掲載された書簡において、「ある系統に属する最後の一人または生物種の個体を指す」ために用いる言葉として提案された。
ロンサム・ジョージは、おそらく最も有名なエンドリングだが、この悲劇的な称号が与えられたのは彼だけではない。以下に、生命のはかなさと、絶滅がもたらす取り返しのつかない結果を痛切に思い起こさせる、他の2つの事例を紹介しよう。
1. リョコウバトのマーサ

最後のリョコウバト(学名:Ectopistes migratorius)として知られる「マーサ」は、1914年9月1日にオハイオ州のシンシナティ動物園で死んだ。かつて北米の空を埋め尽くした同種は、こうして絶滅した。
19世紀には、リョコウバトは数多く生息していた。何マイルにもわたって空を覆う群れの姿で、あたりが何時間も暗くなるほどだった。しかしその後、わずか数十年のあいだに、乱獲と生息地破壊によって個体数が激減した。
リョコウバトが絶滅に至った決定的な要因の一つは、食性が非常に偏っており、ドングリやクリといった木の実を主な餌としていたことだった。
2020年4月に学術雑誌『Quaternary Science Reviews』誌に発表された論文によると、北米全域で森林伐採が進むのに伴い、生息地としていた森林が激減したことで、かつて豊富にあった食料源が不足し、それらに依存していた食性が持続不可能となった。
マーサは死後、保存処理を施され、現在スミソニアン博物館に収蔵されている。



