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2025.09.25 16:00

半導体からクジラの噴気まで。カールツァイスが180年貫く「視る力」

創業約180年の光学機器メーカー、カールツァイス。同社が培ってきた技術と「視る力」はビジネスの枠を超え、海洋研究支援など異分野まで幅広い。本質を見抜くことをブランドアイデンティティとする同社の企業哲学にフォーカスする。


1846年、ドイツで創業したカールツァイスは、顕微鏡をはじめとする研究分野を起点に、医療技術、産業用測定分野、コンシューマー向け製品、そして半導体製造技術へと事業を拡大してきた。

これらの事業に共通するのが、「目に見えないものを可視化する」という理念だ。ブランドアイデンティティ「Seeing Beyond」は、その視点を端的に表す言葉である。日本法人CEOヴィンセント・マチュー(写真。以下、マチュー)は「Seeing Beyond」が示すものについて次のように語る。

「この言葉には、物理的な遠方を観察するという意味だけでなく、複雑で見えにくい問題の核心を洞察し、本質を把握するという意味も込められています。カールツァイスでは、経営判断や企業戦略においても『Seeing Beyond』を指針とし、表面的な現象にとどまらず根本原因や未来の可能性を見据えた意思決定を行っています」

視る力を発揮する「クジラ研究」。共創は長期視点がベース

「Seeing Beyond」は、社会貢献や研究支援などでも体現されている。そのひとつが、東京・三宅島で進められている「三宅島クジラ鼻水プロジェクト」*1だ。

クジラの噴気(潮吹き)に含まれる微生物やDNAを通じて、海洋生態系を探る研究で、近年この海域で見られるザトウクジラの潮吹きに合わせてドローンを飛ばし、噴気を採取。そこから病原体や遺伝情報を解析し、個体の健康状態や世界各地のザトウクジラとの血縁関係を解明するとともに、微生物の分布変化から海洋環境の変動を調査するという取り組みである。

「自然やクジラを守るという研究の理念と、ツァイスが培ってきた技術を社会に役立てたいという思い。このふたつが同じ方向を向いていたからこそ、私たちはこのプロジェクトにかかわる意義を感じました」

カールツァイスはこの研究を、顕微鏡などの機器提供や技術支援、資金援助を通じて支えている。

「海洋環境の研究においても、目に見えない世界を可視化することで、これまでとらえきれなかった情報や変化を明らかにできる。そうした知見が、科学の進展や環境保全の一助になると信じています」

カ ールツァイス代表取締役社長のヴィンセント・マチュー。
カ ールツァイス代表取締役社長のヴィンセント・マチュー。

同社は「利益を科学と社会に還元する」という理念を掲げるカールツァイス財団を母体にもつ。創業時から受け継がれてきた理念は、業種や分野を超えた「共創」の姿勢へとつながっている。

現代では、その精神が「Seeing Beyond」の副題として掲げる「Enabling you to realize ambitions(志を実現する力となる)」として表現され、三宅島クジラ鼻水プロジェクトをはじめ、国内外の研究機関との取り組みに息づいている。

カールツァイスのリサーチマイクロスコピーソリューション事業部は、京都大学アイセムス(物質-細胞統合システム拠点)と共同研究の場を構築。最新鋭の顕微鏡を提供するだけでなく、研究者のフィードバックを今後の製品開発へ反映させる取り組みを進めている。

「共創のパートナーを選ぶときに大切にしているのは、長期的な視点です。短期的な成果や見せかけの環境配慮、いわゆるグリーンウォッシングに陥らないよう、本質的に科学の発展に資するかを見極めます。特に、若い世代に科学への関心をもってもらうための活動や、研究を続けられる環境づくりは、続けるほど価値が出てくる。そうした取り組みを可能にしているのが、創業から約180年で築かれた信頼と、カールツァイス財団から受け継いだ理念です。これを土台に、分野や立場を超えてパートナーと協力し、価値ある未来をともに築いています」

熊本大学のオープンラボ「SOIL」(Semiconductor Open Innovation Laboratory)では、「くまもと3D連携コンソーシアム」に参加し、半導体試料の解析や就労者向けの各種顕微鏡トレーニングを通じて地域産業の振興に貢献。

さらに、オランダに本社を置く半導体露光装置メーカーASML社と協力し、EUV(極端紫外線)露光装置向けミラーレンズの開発で培った技術力を、日本国内の半導体研究へ生かしている。

人中心の経営は1世紀前から。「先見の明」を磨き続ける

カールツァイスが180年近くにわたり、常に新しい価値を生み出し続けてきた背景には何があるのか。マチューは、その理由を「改革を目指す際には、必ず人間を中心に物事をとらえてきたから」だと語る。

「私たちの歩みには、常に時代を先取りする決断がありました。19世紀後半、多くの企業が社会保障制度を導入し始めていましたが、1889年に財団を設立したエルンスト・アッべは、健康保険や退職金、8時間労働制といった施策を『雇用主からの恩恵』ではなく『従業員の権利』として位置づけました」

「革新は技術だけでは生まれません。人が能力と創造性を最大限に発揮できる環境こそが、変化を生み出す基盤になります。そして私たちは今も、『人を中心に置く』ことを守り続けています。ここ数カ月の取り組みにおいても、従業員アンケートを実施し、ワークショップや対話を重ねてきました。そこで見えてきたのは、モチベーションが高まる瞬間や、逆に低下する背景にあるリアルな声です。それらを受け止め、具体的なアクションへとつなげる。この地道な営みこそが、私たちの組織を未来へと進める力になっています」

事業の成長と同じ熱量で、ともに働く仲間の環境づくりにも力を注いできたカールツァイス。特に、8時間労働制や健康保険制度の導入を「従業員の権利」として位置づけたことは、近代的な組織づくりの礎を築いたとも言える。しかしマチューは、自社のソーシャルデザインを世に広めることが目的ではないと語る。

「私たちは人類そのものの在り方を変えようとするのではなく、人々の営みを支える存在でありたいと考えています。テクノロジーがどう役立ち、どのように生かしていただけるかを常に意識しながら活動しています」

同社が実施する、若い世代の科学的好奇心を育む教育プログラム「A Heart for Science」では、顕微鏡観察体験や学校訪問などを通じ、子どもたちの知的探究心を育成。マチューは「科学は未来を支える力です。私たちの技術が人の役に立つという実感を、子どもたちにも届けたい」と語る。

カールツァイスは短期的な利益にとらわれず、長期的な視点でイノベーションを生み、人を育み、働き方を変えてきた。その原動力となっているのが、「見えないものを視る力」である。約180年の歴史をかけて磨かれてきたこの力は、これからも科学と社会、自然と人間の新たな接点を切り拓いていくに違いない。

*1 三宅島クジラ鼻水プロジェクトの詳細はカールツァイスのプロジェクトページで確認できる
http://www.zeiss.co.jp/whales-of-miyakejima

カールツァイス
https://www.zeiss.co.jp/


ヴィンセント・マチュー◎カールツァイス代表取締役社長。フランス出身。英国の指紋認証アクセス制御会社CEOを経て、2016年同社に参画。ビジョンケア事業の日本・アジア統括を務めた後、25年より日本におけるツァイスグループの責任者を務める。

Promoted by カール・ツァイス | text by Motoki Honma | photographs by Junji Okunishi | edited by Aya Ohtou(CRAING)