ダイヤの価値を知らない、弱き労働者を搾取から守れ
ダイヤモンドも、紛争鉱物のひとつです。アフリカにはダイヤモンドの産地が集中しており、違法に採掘されたダイヤモンドは、1980年~1990年台にアフリカで頻発した内戦の資金源になりました。
世界のダイヤモンド産出量の20%、約3640億円相当が、スコップなどの簡易的な道具を使い、零細採掘労働者により手掘りされたものです。この採掘方法は貧困地域で広がり、インフォーマル経済の中にあるため、規制が行き届きません。労働者は坑道崩落や粉塵、化学物質吸引による健康被害など、高いリスクに晒され続けているほか、環境破壊や搾取、人権侵害も横行しています。
NPOのダイヤモンド・フォー・ピース(以下、DFP)は、そうした問題の根源は絶対的貧困にあるとし、かつて内戦のあった西アフリカのリベリア共和国でダイヤモンドのフェアトレードのしくみづくりに挑戦しています。
リベリアでダイヤモンドの手掘りをしている労働者の間には、こんな言い伝えがあります。
「ジーナ(女悪魔)が、地中にダイヤモンドを埋める」
「ダイヤは勝手に歩く! だからどこにあるかを見つけるのが難しいんだ」
リベリアでは2度の内戦やエボラ出血熱の影響により、教育を受けていない成人が多くいます。その影響か、科学的根拠のない迷信を信じている人がいます。そして彼、彼女らは自分たちが掘っている鉱物がどんなもので、どれくらいの価値があるのか知らず、仲買人に言われるがまま取引するしかない現状があります。
DFPは現地でスタッフを雇用し、労働者にダイヤモンドとは何かをはじめ、効率的かつ環境にやさしいかたちで採掘する方法などについて研修を行うほか、労働者の収入安定のために養蜂の技術習得も支援しています。
中には支援を受け、真綿が水を吸うように知識を得て、未来の希望を語る労働者も。採掘したダイヤモンドを国際市場へ輸出するにはまだ壁がありますが、一歩ずつ前進しています。DFPは、現地の支援を通じて得られた知見をもとに、ダイヤモンドの調達に関するデュ-ディリジェンス(適正評価)策定にも取り組んでいます。
昨今、紛争ダイヤモンドの問題について「ブロックチェーンで追跡できるようにしよう」「人工ダイヤモンド(ラボグロウンダイヤモンド)を販売しよう」といった提案があります。しかし電気やインターネットも通っていない採掘地で、どうやってブロックチェーンのしくみを作るのか。ラボグロウンダイヤモンドの生産は、はたして公正な労働や人権、環境に配慮されたものなのか、乗り越えるべきハードルはいくつもあります。


