買い物、支払い、代金の受け取りの方法が変わりつつある。マスターカードは取り残されるリスクを避けるために、素早い動きを見せる。マスターカードは今週、AIエージェントが消費者に代わって、今日の電子決済に人々が期待するのと同等の容易さと信頼性をもって商品購入を行えるように設計された、開発者向けツール、業界標準の策定、そして新たなパートナーシップを組み合わせたパッケージを発表した。
この動きは、ここ数カ月にわたり同社がAIに対して進めてきた取り組みの延長にある。本年初め、同社は「エージェント・ペイ」(Agent Pay)を導入した。これは、特別な「エージェント・トークン」(agentic tokens)を用いて、承認済みのAIアシスタントが取引できるようにする仕組みだ。今回、同社はその考え方を拡張し、エージェント主導のコマースを安全かつスケール可能にするために必要なインフラとルールを提供しようとしている。
エージェント型コマース(Agentic Commerce)とは何か
エージェント型コマースの基本的な考えは、自律的な生成AIシステムが単に商品やサービスを提案するだけでなく、ユーザーの購買代理人として行動するようになる、というものだ。これらのエージェントは過去の選好を記憶し、価格とスピード、あるいは顧客の嗜好のバランスを取り、設定された上限の範囲内で購入を実行する。そう遠くない将来、人々はAIエージェントに「買い物リストから食料品を注文して、120ドル(約1万7700円)以内で、木曜日に届けてくれ」と頼むようになるかもしれない。エージェントは、その後ほとんど、あるいは一切の人手を介さずにその作業を実行するだろう。
この変革は、eコマースから仲介を排除し、おなじみのチェックアウト(「レジ」での支払い)工程や、アップセル/クロスセルの機会を取り除く。消費者は「購入」ボタンをクリックする代わりに、ルールを設定してエージェントに遂行させることになる。約束されるのは、利便性、スピード、パーソナライゼーションである。しかし、強力な保護策がなければ、エージェント型の仕組みはコントロール喪失につながり、意図の誤解、詐欺被害、大切なデータの露出を招きかねない。
マスターカードの最高サービス責任者(CSO)であるクレイグ・ヴォスバーグは「AIに支えられた決済は単なる流行ではなく、変革なのです」と語る。
エージェント型コマースの発想は業界横断で支持を広げつつある。ビザカードは自社の構想を「インテリジェント・コマース」(Intelligent Commerce)と呼ぶ。ペイパル、ストライプ、主要テック各社も、自社のエージェントに金銭を使わせる方法を試行している。まだ黎明期であり、信頼と実行を支えるために必要なインフラは未完成のままだ。



